テレビCMシリーズの放映で売上を伸ばすメガネ型拡大鏡「ハズキルーペ」。商品取り扱い店舗は4万7000店となった。CMの企画からカメラワーク、スタイリングまで、クリエイティブディレクターとして総監督を務めるのが、プリヴェ企業再生グループ/Hazuki Company代表取締役会長の松村謙三氏。その広告効果について聞いた。
オーナーだから、すべてのリスクをとっている
Hazuki Companyは、松村謙三会長率いるプリヴェ企業再生グループによって2007年に買収された後、独自の商品「ハズキルーペ」を開発。自社工場で大量生産できる体制をとり、製造、販売している。本体価格は1万167円。現在、広告媒体費を年100億円かけ出稿量を増やし、ブランドを育てている。
「世の中の文字は、小さすぎて見えなーい」と俳優の渡辺謙さんが叫ぶ60秒CMが2018年ブレイク。続編「武井咲×小泉孝太郎×舘ひろし編」は、作品別CM好感度ランキング1位(10月CM総合研究所調べ)を獲得。
「渡辺謙×菊川怜編は、怒りというテーマを渡辺さんがくれて、僕が演出やセリフを考えたのですが、武井咲編はすべて僕が考えました。プロの広告クリエイターではないですから、いつも半信半疑ですが、見る方の期待を外さず、何度でも見たくなるもの、反響が出るものを考えてつくりました。そしたら、一般の方を対象に調査した、作品1本1本の人気が分かるCM好感度ランキングで、KDDI、ソフトバンク、NTTドコモを抑えて、4135本の中でダントツ1位になったんです」と松村会長。
武井咲さんが主演したテレビ朝日のドラマ『黒革の手帖』の世界観を彷彿とさせるCMは、武井さん扮する銀座のママの店でハズキルーペを売るという設定だ。
「僕が考えたCMアイデアが正しいかどうかを確認するために、広告クリエイターに話して、プロとしてどう見ますか、と聞くのですが、ドラマを再現する武井さんの演出は絶対無理です、と反対されました」
ところが蓋を開けてみれば、武井さんが所属するオスカープロモーション社長がテレビ朝日の会長を説得し実現。慣習にとらわれないキャスティングが反響を呼び、武井咲編は20代からの好感度も高く、ターゲット年齢の引き下げに寄与している。
シリーズを通してハズキルーペのCMでは、出演者が「はっきり綺麗に見える」「この強度、さすがMADE IN JAPAN」「ハズキルーペ大好き」などと商品名や機能を語り、イメージ訴求のCMとは真逆を行く …