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テクノロジーの力で説明責任に応える!広告投資の効果検証

強まる、広告投資の説明責任を問う声 広告管理の課題とこれから

木戸 茂氏(法政大学)

広告がそのまま購買につながりにくくなっている一方、デジタルでは数値が見えるようになってきているため、広告投資に対する効果についての言及は強まっている。本稿では測定が難しい背景、効果指標、課題領域について、法政大学の木戸氏が解説する。

    POINT

    Point 1 ▶ 効果測定についての課題

    Point 2 ▶ 広告の目的と効果指標

    Point 3 ▶ 新指標の開発

1.広告計画のアカウンタビリティの課題

広告計画のアカウンタビリティ(説明責任)の明確化はマーケターにとっての最大の課題のひとつである。この課題は広告計画の妥当性に関する問題意識であり、広告コミュニケーションへの投資の回収に関する測定方法の開発課題である。

❶ 広告効果の階層モデルの歴史

歴史的には、過去に広告やマーケティングの売上(利益)に対するアカウンタビリティを断念する流れがあったと言われている。1961年のJournal of Marketing誌(10月号)に掲載されたLavidge & Steiner(1961)の広告認知から購入に至る「広告効果の階層モデル」論文の中で、広告効果指標の態度尺度へのシフトを提唱したのがそのきっかけである。

同時期に米国の広告主協会(A.N.A.)から出版されたColleyのDAGMAR(Defining Advertising Goals for Measured Advertising Response;A.N.A.,1961)の発表でこの流れは決定的となり、今日に至っている。

❷ ROI測定の困難さの原因

近年、欧米で開発された広告のアカウンタビリティを明確にするためのアプローチについての紹介もあり(木戸、2004)、ブランド・コミュニケーションの視点から、新しいROI (投資対効果)測定法と、企業戦略・マーケティング戦略に基づいた資源(予算)配分の方法論と解決ツールの開発が再び求められている。一方では、売上に対する広告の効果や特別なインパクトを、分析して詳しく調べることがメディア環境の変化や、競合状況の激化により、近年とくに困難になりつつある。

このROI測定の困難さの原因としては、
1. 測定対象の効果の継時的変化
2. 広告効果の遅延
3. 追跡不可能なコミュニケーション・チャンネル内での効果の発生
4. 複数の広告計画や他のマーケティング活動の同時進行
などが考えられる。

この困難を克服するためには、ROIを結果として説明できる態度尺度ベースの効果指標の開発が必要である。本稿では、ブランドの考慮集合内(購買検討対象の製品群)での位置の測定をベースとする効果指標の研究事例を紹介する。

2.業界標準の広告効果指標

広告効果の実証は「業界」の積年の課題である。広告の効果指標として、何が適当か、現在も重要な課題のひとつである。近年は、米国の業界団体のARF(The Advertising Research Foundation)が業界標準の効果指標の設定に大きな影響力を持っている。

図表1は筆者がインターネット広告の黎明期に出席したARFの専門家会議で提案された、広告効果指標の階層図である。広告のアカウンタビリティを表す指標としてROIが最も上位の指標に位置づけられている。

図表1 ARF広告効果指標の階層図

❶ 広告目的と広告効果指標

広告目的の設定は広告効果指標の選択でもある。広告効果を測定する上で、明確な広告目的の設定と効果指標の選択は表裏一体のものである。

図表1は広告計画の中で広告メディア、ビークル(広告枠)別にその効果の比較管理を行う場合に用いられる広告効果指標の階層構造を表現したものである。広告目的との対応で見ると、ROIは広告が正に長期的な「投資」目的である場合の経営レベルの効果指標である。

● Loyal Customersは「ブランド・ロイヤル」な顧客の獲得を広告目的とする場合のブランディング・レベルの効果指標。

● ProfitとSalesは広告による「利益」と「販売」を広告目的とする場合の財務レベルの効果指標である。

● Leadsは広告接触によって引きつけることのできた「問い合わせ」などを広告目的とする場合の行動レベルの効果指標。

● Advertising Persuasionは広告接触による「態度変容」を広告目的とする場合の意識レベルの効果指標である。

● Advertising Recallは、広告接触によるブランド名や広告メッセージの「記憶」を広告目的とする場合の認知レベルの効果指標 …

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