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理念に対する共感がカギ 社員の元気をつくるコミュニケーション

世界のエクセレントカンパニーが実践 「パーパス・ブランディング」というムーブメント

ジャスティン・リー氏(エスエムオー)

P&GやGoogle、Evernoteなど今、世界の企業で浸透している「パーパス・ブランディング」。なぜミッション、バリューではなく「パーパス」が注目されるのか。2012年より、東京とロサンゼルスを拠点に、ビジネスにおけるパーパスの重要性について定期的に講演を行ったり、パーパス・ブランディングのコンサルティングなどを手掛ける、ジャスティン・リー氏が解説する。

目的、存在理由、大義 パーパスが意味することとは?

2008年10月P&Gの元グローバル・マーケティング・オフィサーのジム・ステンゲル氏が米国「Association of National Advertisers」のカンファレンスに登壇した。彼はもうじき退任する予定で、P&Gの社員としては最後のキーノート講演だった。およそ1200人の関係者を前にして彼は、P&Gにいた25年間で自身が学んだ最も重要な5つのことを伝授した。その5番目、最後の締めくくりとして、彼はブランドには「Purpose(パーパス)」が必要だと語った。

これを機に「purpose based branding(パーパス・ブランディング)」のムーブメントがさらに加速したと言っても過言ではない。ステンゲル氏によるとパーパス・ブランディングとは「having an inspirational reason for being for your brand and having all activity emanate from that」のことを指している。つまりブランドにおける、あらゆるインタラクションから起こる体験はすべてブランドの存在理由であるパーパスにたどり着くというのだ。

パーパス・ブランディングの詳細を語る前に、ビジネスにおけるパーパスの定義を明確にしたい。英語の辞書を引けば、パーパスには大きく2つの意味が載っている。ひとつ目が「目的」と「狙い」である。パーパスを日本語に訳す時、最も適用される意味だ。2つ目が「a reason for which something exists」で、物事の存在する理由を示している。企業とブランドのパーパスについて話す場合、この意味合いが多分に含まれている。

実は、辞書には載っていない3つ目の意味合いがある。2年前、ハーバード大学にてパーパスについての講演をしたマーク・ザッカーバーグ氏は「Purpose is that feeling that you are a part of something bigger than yourself, that you are needed, that you have something better ahead to work for. Purpose is what creates true happiness.」と語った。つまり、目的、存在理由に加え、日本語で言うならば「大義」のような意味合いも含んでいるということだ。

明確で分かりやすいミッション、ビジョンとの違い

筆者がパーパスについて説明をすると、ミッションビやジョンとどう違うのかという質問をよく受ける。相違点は2つある。違いのひとつがパーパスは「present tense(現在形)」であるということ。ミッションとビジョンが未来指向である一方、パーパスは現在進行形の感覚を有しているのだ。今この瞬間、私は何のために存在しているのか、このブランドはなぜ存在しているのかについて、パーパスという言葉は強く訴えている。

違いの2つ目が、ミッションとビジョンという言葉の持つ定義の曖昧さである。10人のビジネスパーソンにミッションとビジョンの意味を聞いたら、10通りの回答が返ってくるだろう。それに対して、パーパスの意味は明確である。パーパスの意味を突き詰めると、その核は「WHY」つまり、それをなぜやっているのか、というシンプルな本質に行き着く。

10年前まで経営理念と言えばミッション、ビジョン、バリューズという3点セットが当然だった。すでに述べたが、ミッションとビジョンの定義は曖昧で、人によって捉え方が異なる。その上、バリューズはたいてい10個以上で構成されており、普通の人間ではすぐ思い出せない数だ。この3点セットで日々の業務が正しく遂行されるのか、はなはだ疑問である。

ノイズが溢れている今の時代、ビジネスパーソンを含め多くの人々は分かりやすさと使いやすさを求めている。今までの経営理念の3点セットは機能しなくなってきた中で、パーパスの分かりやすさと力強さを重視し、明確なパーパスを制定する企業が多くなっている。パーパスという概念が、経営理念体系をシンプルかつパワフルにする有効な手段であり、経営理念の浸透に大いに貢献することができると信じられているのである …

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