2013年には日本でほとんど認知されていなかったジムビームは2016年には国内バーボン市場の50%以上を占めるまでに成長。イー・スピリット代表の足立茂樹氏がサントリースピリッツ 宣伝部 課長の伊戸隆二氏に話を聞き、急成長の秘密を探ります。
若い世代の心をつかんだ驚きのイメージ戦略
足立:サントリーさんがジムビームを買収されたのは2014年でしたよね。
伊戸:ええ、そうです。当時、僕はビールを担当していたので、大きなプロジェクトが動いているな、と傍から見ていました。日本ではジムビームの認知度はかなり低かったのですが、それをバーボンナンバーワンにして、サントリーのスタンダードブランドに育てあげるビジョンを描いていたようです。
足立:まさに2013年がブランディング元年だったのですね。レオナルド・ディカプリオさんを起用したテレビCMが印象的でした。
伊戸:当時、バーボンウィスキーはワイルドで男臭くて埃っぽい田舎のイメージだったので、ジムビームはそれとは真逆の、都会的でクールなイメージを打ち出しました。加えてレオナルド・ディカプリオさんを起用することで登場感を演出したかったのです。とにかく広告が到達するスピードがものすごく速くて、反響は相当大きかったと聞いています。
足立:今はローラさんのCMが定着していますが、ディカプリオさんからローラさんへ、かなり大きな変更だったのではないでしょうか。
伊戸:ジムビームは登場から2年かけてディカプリオさんで都会的でクールなイメージを醸成しました。それで知名度も上がりましたが、一部の人にだけ支持される「輸入物」という見え方はまだ強かった。日本のウィスキーのスタンダードにするには、もっと幅広い人に受け入れられなければいけない。
当時、ローラさんはバラエティ番組にも多く出演されていて、可愛いというイメージが強かったんです。でも、彼女がモデルをしている時はクールでかっこいい。そういう面をクリエイティブで出せれば、ディカプリオさんがつくったクールで都会的なイメージを守ることができますし、何よりも可愛い面しか知らない人たちに驚きやギャップを与えることができます。ローラさんの起用にはそういう計算もありました。
足立:ローラさんを起用することで、親近感が醸成されたのですね。今ではローラさんがジムビームの顔になり、非常に良い波に乗っているのではないですか。
伊戸:はい、さらに市場拡大できるチャンスと捉えています。ウィスキー市場はこの10年で2倍に伸びました。ジムビームも大きく伸び、年初に掲げた目標81万ケースは達成できそうです。
足立:そうすると、戦略的には広告量も増やしていくのでしょうか …