2007年にスタートし、12回目を迎えた「宣伝会議インターネット・マーケティングフォーラム2018」。6月5日、6日の2日間にわたってANAインターコンチネンタルホテル東京にて開催されました。今年のテーマは「Industry Innovation ~新しいルールをつくる人たち~」。最先端の取り組みやサービスを提供する企業が一堂に会し、デジタル時代の今、顧客体験を軸にどのような価値が提供できるかを紹介。本号では、本フォーラム協賛企業による講演レポートを中心に紹介します。
専門領域を持つパートナーと組みユーザビリティ向上を目指す
富士フイルムは2017、18年、経済産業省「攻めのIT経営銘柄」に選出されるなど、早くからデジタル化を進めてきた企業のひとつだ。デジタルトランスフォーメーションをいかに組織的に行い、マーケティングの実践に生かしているのか。
外部パートナーとしてヒートマップツール「USERDIVE」とデータドリブンなWebサイト改善コンサルティングを提供するUNCOVER TRUTH 取締役COO 小畑陽一氏が聞き手となり、富士フイルム e戦略推進室 マネージャー 一色昭典氏が、その戦略を語った。
同社は2000年以降、写真事業を守りつつもその技術やコアコンピタンスを生かし、化粧品や医療機器など新規事業へ挑戦、多角化を成功させている。「Build on Strength」を地で行く姿勢への評価もあり、現在売上の約6割を海外が占める。
そんな同社がデジタルトランスフォーメーションへ大きく舵を切るきっかけとなったのは、フィリップ・コトラー氏が来日講演で発した「Digitize or Die」という言葉だという。講演を契機としたコトラー氏との交流も刺激となり、「写真フィルム市場がシュリンクした危機を今一度思い出し、新しい時代に向けて気持ちを切り替えなくてはという機運が、社内で高まった」と一色氏は振り返る。
多角化とグローバル化の中、事業の統合と拡大が今、マーケティングに課せられたミッションだ。目指すのは、開発力と市場のニーズを融合させ「イノベーションを起こすサービス」を創出すること。富士フイルムグループのICTソリューションを統括・最適化するために5つの関連会社・関連部門を連携させるICT戦略推進室を設置。またそれを管掌するCDOの設置により各事業部門との連携を強化する体制を整えた。
加えて一色氏は、「インハウス化を進めるがゆえ、必要となるのが特定の専門領域にノウハウとツールを持つパートナー」だと話す。本講演では、UNCOVER TRUTHと取り組んだ「イヤーアルバム」Webサイトの再構築を事例として挙げた。
同Webサイトは、1年分の写真データを1冊のアルバムにするサービスを紹介するもの。知育教材会員に子どもの誕生日に合わせフォトブックを無料作成できるクーポンを配布、同じWebサイト上に紹介する有償版への誘導を狙った施策を打ってきたが、思うように成果が出ていなかった。
そこで、Webサイト上のユーザー行動を可視化するUNCOVER TRUTHのツール「USERDIVE」を導入。マウスの動き等をヒートマップで分析すると、有償版の魅力を語るコンテンツが読み飛ばされ、注文クリックまで至っていなかったことが明らかになった。分析結果から、訴求するコンテンツやそのUIの精査を重ねたところ、年間で約1億円もの売り上げインパクトをもたらした。
小畑氏は「ユーザーのインサイトを綿密に把握して態度変容を起こさせることが大事」と語る。一色氏はプロジェクトを振り返り、「データドリブンで議論を進め、マーケターの知識を集結させた社内組織をつくるとともに、外の力をどう使うかが大切」と話し、「事業理解をして同じゴールに伴走してくれるパートナーも巻き込んだチームビルディングこそがプロジェクト成功の鍵」と強調した。
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