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鍵はリアルタイム&パーソナライズ 気象環境とマーケティング

IoT、AI時代の気象データ利活用進化の可能性

佐藤 豊氏(気象庁)

デジタル技術は発展しているものの、企業にはあまり活用されていない気象データ。産学官連携して機会創出を目指す気象ビジネス推進コンソーシアムに、気象データ利活用の可能性を聞きました。

技術の発展により基盤は整うも活用されていない気象データ

近年のIoT、人工知能(AI)、ビッグデータなどに関する技術の発展により、多様な産業において、データを収集・分析する基盤が整いつつあります。これらのデータと気象データを比較し、高度に分析することで、意思決定や業務プロセスを改善し、生産性を向上させることが期待されます。

しかし、総務省が公表した「平成27年度版 情報通信白書」によると、気象データを活用している企業の割合は1.3%と、機械同士が人間を介在せずに相互に情報交換するM2M(Machine to Machine)が得意なセンサーデータなどと共に、その割合がとても少ないことが分かりました(図表1)。これは、気象データには先端技術や他データと組み合わせることによる生産性向上の潜在力はありますが、現在は使われてない「ダークデータ」の状況にあることを示していると言えます。

図表1 各種データを分析に活用している企業の割合
総務省「ビッグデータの流通量の推計及びビッグデータの活用実態に関する調査研究」(2015)より著者作成

産学官連携で機会創出を目指す 気象ビジネス推進コンソーシアム

この課題を克服するためには、産業界が求める気象データの提供環境の改善や、IoT・AI技術などを駆使して気象データを高度に利用する産業活動の実現に向けた対話・連携を促進することが重要です。

この対話・連携の強化を図り、気象データを活用した新たなビジネスの創出に向け、気象事業者に加えて情報通信、農業、小売、保険など関係する産業界や先端技術に知見のある学識経験者の方を構成員とした「気象ビジネス推進コンソーシアム」(WXBC:Weather Business Consortium)(会長:東京大学大学院情報学環・越塚 登教授)という産学官連携の組織を2017年3月7日に立ち上げました(図表2)

図表2 気象ビジネス推進コンソーシアム(WXBC)

この「WXBC」という略称は、無線などで気象を表す「WX」を用いるとともに、WとBの間のXにより気象(Weather)とビジネス(Business)を掛け算して新しいものを生み出すことを表現したものです。

WXBCでは、WXBC会員と気象庁が連携して、気象データに関する特徴や利活用方法を説明するセミナーなどを開催。気象データの情報・知見を共有し、気象データを活用した先端事例の創出を目的とする実証実験や、気象データの利活用に向けた課題に関するヒアリングと対応策の検討を進めています。

また、気象事業者と産業界のマッチングを図るため、産学官関係者が一堂に会する対話の場として、気象ビジネスフォーラムを開催しています。第1回フォーラムは2017年3月7日に、第2回は2018年2月13日に開催しました。WXBC会長の越塚 登教授による基調講演やパネルディスカッションを含めたシンポジウム、気象に関する取り組み・サービスを紹介する展示会が催され、多くの参加者による情報共有・交換が行われました。

気象データの利活用が進む海外の広告・マーケティング事例

一方、海外に目を向けますと、すでに気象データの高度利用が進んでいます。欧米では、デジタルサイネージやWebサイトを利用した気象連動型の広告やマーケティングが行われています。

例えば、あるハンバーガーチェーンは、予想積雪量を自社製品であるコーヒー上のホイップクリームに見立てて連動させたり、また、ビール販売事業者は、特定の気象条件(温度・天候など)に達すると、広告をより最適な表示内容に変化させたりするなど自社製品の訴求力の強化に気象データが活用されています …

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