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気象情報が与える消費者の気持ちと行動への影響

小山太郎氏(中部大学)

天候の変化により、体調や気持ちにも変化はあるのでしょうか。15年前より降雨量データを用いて研究を行っていた中部大学の小山太郎氏に考えを聞きました。

百貨店の売上課題に降雨量データで立ち向かう

マーケティング・メトリクス(成果指標の測定・開発)の一環として気象情報が消費者行動に与える影響についての研究・分析を行いました。これは、悪天候が、マーケティング施策の効果を打ち消す効果を持っているからです。日本は天候の変化が激しい国であるにも関わらず、気候とマーケティングという観点で研究する人は少ないのが実情で(注1)、海外でも同様でした(注2)

(注1) 例外として、岩本俊彦「気象条件と販売予測」『マーケティングの最前線』学文社(1983年所収、82-90)があります。

(注2) Steele,A.T.(1951),Weather’s effect on the sales of a department store. Journal of Marketing Vol.15,436-443の後、この分野で論文が出たのは2001年です。

しかし、2010年を過ぎたあたりから、そういったテーマで少しずつ論文が発表されるようになりました。海外での関心の高まりの背景には、都市社会学者のマイク・デイヴィスなどが指摘するように、経済活動全般に気象が大きな影響を与えるからには、個々の消費行動にも影響を与えているに違いない、ということがあると思います。

海外では気温や日照量との関係を探る研究が主流ですが、日本は雨の降るパターンが複雑であるため、私は都心にある百貨店の婦人服部門を対象に、降雨量データと百貨店のID付POSデータを照らし合わせた研究を行いました。婦人服部門を対象にしたのは、当該百貨店の経営課題が、地下の食料品売り場に来店した顧客を上階の婦人服売り場へ誘導して売上を伸ばすことだったからです。

判別分析の結果、「雨あるいは雨のち曇り」かつ「日降水量20mm以上」という条件が両方同時に満たされる場合、売上減少となることが分かりました。「曇りのち雨」の場合は、売上が減少しません。また、メンバーズカードのポイントアップ期間や社員優待販売期間に該当している場合、上述の悪天候でも売上は減少しません。

以上の分析から、降雨による売上の減少分を補填するためのクーポンを発行するシステムをつくりました(降雨予測に連動したクーポン)。しかし、後から振り返ると降雨による売上減少を値引きクーポンの発行によって和らげるという発想は行き過ぎで、売上の減少予測に基づき、仕入れや人員を減らして、コスト削減を図る方が現実的だったと思います。

こうした過去の研究を踏まえ、気象が消費行動に影響を与えるかどうか、考えてみたいと思います。

@123RF

二十四節気(七十二候)から考える日本の気象と消費者行動

気候とライフスタイルとの関係を探るうえで参考になる文献として、寺田寅彦氏による『日本人の自然観』という論文と、京都学派による座談会的な記録である『日本人の生活空間』(朝日選書)という書籍があります。日本人のライフスタイルを考慮すると、4〜5日単位で小季節が変わるような七十二候を備えた日本では、季節感の乏しい大都市でも旧暦の七十二候の遷移時(梅雨の晴れ間、台風の通過後など)に消費行動が発生しやすいと思われます。

詳細はデータを使ってトレンド分析してみないと分かりませんが、もしそうであるなら、例えば7月7日は、夏の到来を告げる温風至(あつかぜいたる)の候ですが、「温風が至ったのでビールで一杯」などのコピーがあっても良いかもしれません。

日本は雨・湿度 海外は気温・日照量

2015年、シカゴとマイアミにおいて自動車の売れ行きについて調べたアメリカの研究が発表されました(注3)。悪天候時(低気温かつ雪)に、四輪駆動車の売上がベースラインと比べて上昇する一方で、秋に気温が高く曇りでなければオープンカーの売上が伸びることを突き止めています。降雪で道路がぬかるむと四輪駆動車を購入したくなり、曇りの日では、試乗で爽快感が味わえないため、オープンカーの売上が伸びないということです …

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