気象環境は売上に大きな影響を与える要素でありつつ、その予測データはまだ十分に活用できている状況とは言えません。予測不可能な天気と向き合い、売上向上を目指すマーケターの皆さんに、座談会を通して気象とマーケティング、その活用アイデアについて意見交換をしてもらいました。

(写真左から)ジョンソン・エンド・ジョンソン コンシューマー カンパニー 安藤尚人氏、趙 恩淳氏、モルソン・クアーズ・ジャパン 小林弘樹氏、明治 河原健二氏。
商材ごとに異なる特徴 天気と売上の深い関係
──現在ご担当されている商品の概要とお仕事について聞かせてください。
小林:モルソン・クアーズ・ジャパンでビールのブランドを担当しています。「クアーズライト」も担当していますが、仕事のメインは「ブルームーン」といった感じですね。ブランドのコンセプトからエグゼキューションまでをトータルで見ています。
趙:私はジョンソン・エンド・ジョンソン コンシューマー カンパニーでメディア担当をしています。デジタルメディアからマスメディアまで、各ブランドの横断的なコミュニケーションプランニングに携わっています。
安藤:同じく、ジョンソン・エンド・ジョンソン コンシューマー カンパニーに所属しています。以前までECの担当でしたが、5月から主に「リステリン(R)」のメディアプランニングを中心に担当しています。
河原:私は明治で「明治ミルクチョコレート」や「チョコレート効果」などの商品を担当しています。直近では、カラフルなバリエーション展開をしている「明治ザ・チョコレート」のプロモーションを担当しています。
──それぞれのブランドの売上に対して、気象環境がどのように影響しているのか教えてください。
小林:ビールに関して言えば、売上の一番のピークは夏前。6月中には大体、その年の売上が予測できてしまうくらい、夏場の売上が大きな意味を持ちます。皆さん、ビールの売上は最も気温が上がる8月が最も多いと思われるかもしれませんが、すでにゴールデンウィークくらいから商戦期は始まります。そして、6月中旬くらいには、ほぼその年のトレンドが見えるんです。
気象の影響という点ではやはり、ある程度高い気温が続けばビールは売れます。ただ、気温が30度を超えると逆に売上は鈍化してくる。最近のようにゲリラ豪雨が増えたり、8月なのに雨続きといった状況だと、温度が上がらずビールに結びつきません。
河原:チョコレートに関しては売上を左右する「18度以上」という気温のラインがあります。当社では、チョコレートとアイスクリームの2大カテゴリーを抱えているのですが、それらは気温によって真逆の売上を見せます。アイスが売れればチョコレートの売上が落ち、その逆もまたしかり、といった具合です。
これまで10年間の相関をとったところ、18度以上では1度上がるごとに販売金額が4ポイント下がるという強い相関関係が分かっています。また、平均気温が前年に比べて高いと、売上は顕著に前年を割り込みます。逆に気温が平均気温より約3度下がった週には販売金額が前年比で107%に増えたという結果も出ています。
とはいえ、それで売上が落ちたとしても社内では言い訳にならない。これらの事実を踏まえた上でどんな手を打つのか、という話になりますね。
安藤:気候の影響を強く受けるのがボディ保湿剤を展開している「ニュートロジーナ(R)」「ジョンソン(R)ボディケア」です。単純に売上のことを言うなら、寒ければ寒いほど良い。特に前日との気温差が大きく、肌寒さを感じるタイミングで急激に伸びます。保湿剤のシーズンインのタイミングは10月頭。そこで残暑が続くと売上は大きく下がります。
逆に、秋口に気温がぐっと下がると売上は上がります。そのため、シーズンインのタイミングにどんなプロモーションやメッセージを打ち出すかを常に意識しています。大切なのは気温と湿度。特にシーズンインの最初に商品を手に取ってもらえるよう、最適なメッセージが出せるように気を配ります。