10回目の開催となった「デジタル時代のブランド戦略研究会」(オプト、宣伝会議、マーケティング研究室の共催)。今回は、消費者の接触メディアがオンラインにシフトしていることを背景に、今後より重要視されるであろう“オンライン空間におけるブランディング”をテーマに議論が交わされた。
ブランディングにおけるデジタル活用進む
10回目となる研究会には、クレディセゾン、ヤマハ、LIFULLと、3社の広告主企業が参加。各社はデジタルを活用したブランディング活動に積極的に取り組んでいる共通点がある。
はじめに、中央大学ビジネススクールの田中洋教授が、現代におけるブランド価値について講演。ブランド拡張が行われたり、消費者にとってもWebによる情報収集の機会が増加している現在、購入前のオンラインでのエンゲージメント(=評価・口コミ)が重要になっていると説明。
「消費者が気にしているのは、その商品を買って損しないかどうか。損を避けるという意味で、知名度の高い既存ブランドが持つ安心感が有利に働く。しかし、従来からあるカテゴリーにおいても、対象消費者が限定されるニッチなサブカテゴリーにおいては、新ブランドであっても、消費者から受け入れてもらいやすい傾向がある。サブカテゴリーを新たにつくり、そのカテゴリー評価を上げることで新ブランドを立てていく余地もありえるのでは」と見解を述べた。
続くオプトの伴大二郎氏による講演では、「ブランドへの共感を得るためには、顧客側がブランドを選ぶ理由の理解が大事」と話があり、「ジョブ理論」を用いた考え方が解説された。
「ジョブ理論」とは消費者は商品・サービスを購入する際、そのモノ自体を欲しいわけではなく、何かしらの用事(ジョブ)を片付けるために商品・サービスを購入しているという概念。デジタルマーケティングの手法に留まらず、ブランドやマーケティングに関わる最新の概念もテーマになるのが、本研究会の特長だ。
今回の研究会で最大の論点となったのが、効果測定の方法について。特にブランディングは、ダイレクトレスポンスと両立しにくい面があるとも考えられている。「最近、全員がクレディセゾンや関係会社の女性社員で構成される『東池袋52』が話題になった。対外的なブランド発信だけでなく、社内の士気向上にもつながるブランディング施策だと思うが、こうした施策の費用対効果は測りづらい」(クレディセゾン 相河氏)。
「KGIを売上台数などに限定すると、構築したいブランドイメージ醸成とつながらない事態が生じる。事業としての評価軸と、マーケティング・ブランドの効果を並列で評価していくことが必要なのかもしれない。加えて、接触したコンテンツに対し、消費者がどのように感じたかを捉えるべきだと感じている」(ヤマハ 西村氏)と、各社が課題を発表した。
それに対しオプトの鈴木智之氏が、様々な側面からブランド評価・可視化する取り組みを、事例を踏まえて紹介。また、鈴木氏は企業の情報的資源としてのブランド活用の視点が欠如していると指摘。そして資源を活用するためには、まずブランドコンディションを把握することが必要だと説いた。
「ブランディング施策や、それを実現するシステム設計などは統合に向かっている。しかし、その統合はシンプルではなく複雑なもので、マーケターに求められているスキル、難易度は年々上がっている」(LIFULL 菅野氏)。
デジタル領域のマーケティングがますます専門特化していく中で、自社内で蓄積すべきスキル、外部の知見を活用すべきスキル、その見極めは難しい。しかし、そうした課題を乗り越えながらも、いかにして消費者に対して統合的なブランド体験を提供できるか。すべては企業視点ではなく、顧客視点に立った組織、機能の統合がデジタル活用の今後のポイントとなりそうだ。
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