史上最大規模のFIFA女子ワールドカップに出稿する米企業
2022年のFIFAワールドカップの興奮も冷めやらぬ、この夏「FIFA女子ワールドカップ オーストラリア&ニュージーランド2023」が開催された。本大会はFIFAが目標としていた観客数150万人を開幕1週間で達成するなど「女子W杯史上最大の大会」となった。4年に一度の好機を逃すまいと、さまざまな企業が大会に協賛しマーケティング活動を行った。
米国広告マーケティング事情
米国では4大プロスポーツ(アメリカンフットボール、野球、バスケットボール、アイスホッケー)の人気に劣るサッカーだが、世界最大のスポーツイベントといわれるワールドカップ(W杯)は、移民大国として一定の注目を集める。残念ながら今年のロシア大会は36年ぶりに米国代表が本大会出場を逃す不測の事態に見舞われたが、4年に一度のマーケティング機会を逃すまいと多くの米企業がキャンペーンを展開中だ。
ロシア大会はFOXが英語放送局として、テレムンドがスペイン語放送局として全試合を独占生中継する。米国の予選敗退で視聴率低下が懸念されるものの、過去のW杯では自国以外の試合でも高視聴率を記録している。実際、前回ブラジル大会の試合別視聴率トップ10のうち6試合が米国以外の試合だった。
米国チーム不在に落胆を隠せないFOXだが、隣国であり最大のライバルでもあるメキシコを「第2のホームチームのように放映する」とアドエイジ誌に述べている。2010年国勢調査によると、米国内のヒスパニック人口は約5100万人。そのうち64.9%がメキシコ系ということもあり、同社の方向転換は現実的だと評価されている。
メキシコ系も含めヒスパニック系移民にとって、W杯は単にテレビで試合観戦するだけのものではなく、本国に残る家族や親戚とつながるための一大イベントだ。そして米企業も彼らと強い絆を築くため、W杯を極めて重要な機会と考えている。
マーケティング・インサイダー誌が4月に行ったアンケートでW杯を見るか尋ねたところ、「見る」または「たぶん見る」という回答が非ヒスパニック系は74%だったのに対し、ヒスパニック系は89%と高い。多くの企業がヒスパニック系をターゲットにスペイン語によるコンテンツでキャンペーンを行うなか、ユニークなのは携帯電話会社スプリントの企画だ。
今回の開催地はロシアであるため、試合は米国時間の午前から午後にかけて行われることとなる。従ってW杯をリアルタイムで観戦するためには、仕事中にどこかで抜け出て見る必要がある …