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キヤノンマーケティングジャパンが体制改革を通じて目指す姿とは

坂田正弘氏(キヤノンマーケティングジャパン)

2018年、全社的な組織体制を改編し、2020年までの中期経営計画をスタートしたキヤノンマーケティングジャパン。「商品起点」から「顧客起点」へのシフトにより、成長を目指す。

「商品起点」の組織から「顧客起点」の組織へ

キヤノンマーケティングジャパン(以下、キヤノンMJ)は本年2月に創立50周年を迎えた。同社は1968年にキヤノンの国内販売部門が分離独立して誕生した。70年代から80年代にかけて販売チャネルを拡大するとともに、キヤノンブランド以外の商材の取り扱いも開始し、システム化やネットワーク化のビジネスを推進してきた。近年はITサービスやソリューション領域の事業の拡大を背景に、2006年に前身のキヤノン販売から現在のキヤノンマーケティングジャパンに社名を変更した。

代表取締役社長就任から4年目に入った坂田正弘氏は、「今年は50周年という大きな節目の年ですが、それ以外の観点でも、当社にとってきわめて重要な年」と話す。中長期的な成長を実現するため、この1月に組織体制を全社的に改変したためだ。

キヤノンブランドのカメラやインクジェットプリンター、オフィス向けのレーザープリンターや複合機といった主力商品は、高い市場シェアを守り続けている。だが市場が成熟化する中、今後、大幅な成長は見込みづらい。

「これまでは商品のシェア拡大に注力していればよかったのですが、それだけでは会社として成長することが難しい時代になりました。お客さまが当社に求めるのは、自社の課題を解決するソリューションであり、生活を豊かにする"コト"の提案です。これまで私たちは、メーカーの販売会社ということもあって、商品という"ハード"を起点に、その優れた点をお客さまに理解していただく販売体制をとってきました。しかし、社長就任以来、今の体制では限界があると感じていました。今回の新組織体制は今後の成長を見据えた新しいフレームワークなのです。」(坂田氏)。

新体制では「顧客起点」を前面に打ち出した。営業部門は顧客別に、コンスーマ(個人顧客)、エンタープライズ(大手企業)、エリア(中堅・小規模企業)、プロフェッショナル(プロダクション・産業機器・ヘルスケア・映像ソリューションなどの専門領域)の4つのユニットに再編。その4つの営業部門を、ITプラットフォーム、BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)、コールセンターなど3つの「機能ユニット」と、マーケティング統括、サービス&サポート統括などの「統括部門」、およびグループ本社が横断的にサポートをする。

従来の商品別の組織体制から顧客・市場別の組織体制への転換を図ったキヤノンMJ。その背景には成熟化する市場環境においては、機能面のみでは大きな差別化が難しく、顧客の課題解決に結びつく付加価値の提案やサポートが求められていることがある。

新体制は、営業が顧客対応を通じて顧客の課題や市場ニーズをしっかりと把握し、それをもとに機能ユニットや統括部門が商品組織の壁を越え、新しい成長領域の商品を創出する仕組みになっている。

「今回の組織改編を機に、よりいっそうお客さまに向き合っていきます。これまで培ってきたキヤノンブランドを中心とした光学や印刷の技術とIT技術を組み合わせ、お客さまごとに最適なソリューションをキヤノンMJグループ一体となって提供し、ビジョンである『お客さまを深く理解し、お客さまとともに発展する企業グループ』を目指します」(坂田氏)。

新たな手法に取り組み、理想のコミュニケーションの実現へ

形のある「モノ」から、形のない「コト」へと事業がシフトしていく中では、その魅力を伝えるコミュニケーション活動にも変化が起きてくる。坂田氏は、「ITの進化により、消費者行動も大きく変化した。デジタルを活用したコミュニケーションがますます重要になってきている」という。

ユーザーとの接触メディアが多様化するなか、BtoCのキャンペーンひとつとってもコミュニケーション手法は大きく変化している。以前は、テレビCMをつくって大量に投下し、認知を広げればよかった。だが今は、お客さまとの接点もアプローチの手法も多様化、複雑化している。

「コミュニケーションを設計するのは広告会社とは限らない時代になったということだと思います。消費者の選択肢が広がった今、マーケットにどのようにアプローチすれば自分たちが望むコミュニケーションを実現できるのか、どういうパートナーと組めば結果を出せるのか、我々はアンテナを高く張り巡らせて、いろいろな最新情報を把握し、理解しておく必要があります。新たな手法に取り組み、さまざまなパートナー会社と交流することは、自分たちの可能性を広げることにもつながるはずです」(坂田氏)。

お客さまの課題に向き合い、感動していただける提案を

キヤノンMJでは、新人研修やワークショップ、管理職向けセミナーなどのプログラムを通じて、人材育成にも力を入れている。そのゴールもまた「顧客起点」を実現する人材の育成だ。

長く営業畑を歩んできた坂田氏は「どんなにデジタル化が進んでも、人と人とのコミュニケーションはいつの時代でも重要だ」と話す。

一方で、今の若い人は良くも悪くも、素直すぎると感じているという。「相手の言葉を額面通りに受け止めて次の行動に移ってしまう若手社員がいますが、お客さまの言葉と思いは、かならずしも一致しているとは限りません。全体の話の流れを考えれば、お客さまの真意が別のところにあるはずなのに、そういう洞察力が不足している」(坂田氏)。

コミュニケーションはお客さまの真意をつかむところから始まる。「若い人たちには、お客さまの心のうちを推しはかり、本当の課題を感じ取ることができるような力を身につけてほしいですね」(坂田氏)。

また、顧客との信頼関係を築くには、顧客の抱える課題に真剣に向き合うことも重要だという。

「お客さまの本当の課題はどこにあるのか。お客さまは提案に満足しているのか。当社の理論は置いてとことんまで考えることで初めて、お客さまの期待を超える提案が可能になります。そうすることでお客さまは『ここまで考えてくれたのか』と感動してくださる。これからのビジネスは、このような信頼関係がより重要になると考えています」(坂田氏)。

キヤノンMJでは、この春から新しい企業グループCM「あなたの胸を打ちたい」篇の放映を開始した。佐藤浩市さん扮するキヤノンMJの営業部長が顧客の抱える課題に対し、社内プロジェクトチームを率いてその期待に応える提案を行うというストーリーだ。キヤノンMJグループの目指す姿を表現したCMだが、タイトルの「あなたの胸を打ちたい」は坂田氏の想いを表したものだという。

企業グループCM「あなたの胸を打ちたい」篇のワンシーン。

「相談しよう!」と頼られる企業グループを目指す

キヤノンMJは中期経営計画の2020年目標として、グループ連結の売上高7200億円、営業利益380億円を設定している。坂田氏は、「キヤノンブランド商品の高いシェアを維持したまま、新しい成長領域の商品と、ITソリューションなどの独自領域の規模の拡大によって目標を達成したい」と意気込む。しかし、そこに思い描く姿は「新しい商品やサービスをたくさん売りたいということではない」という。

目指すのは、お客さまが課題に直面したり、何かを始めようと思った時に、「そうだ!キヤノンマーケティングジャパンに相談してみよう」と、頼りにされる存在になることだ。その実現のため、今後もキヤノンMJは顧客起点の発想で、時代に即した体制やビジネスの改革に積極的に挑んでいく。

キヤノンマーケティングジャパン
代表取締役社長 坂田正弘(さかた・まさひろ)氏

1953年東京都生まれ。77年キヤノン販売(現・キヤノンマーケティングジャパン)に入社。大手法人直販部門を経て、2002年に金融営業本部長に就任。早くから「ソリューション型ビジネス」の展開に注力。その後、2003年ビジネスソリューションカンパニーMA販売事業部長、2006年取締役、2009年常務取締役、2013年専務執行役員、ビジネスソリューションカンパニープレジデントを経て、2015年3月より現職。

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