香港発、世界80カ国に展開する「handy」は、ホテル客室向けの無料スマホレンタルサービスだ。日本では高級ホテルを中心に導入が進み、富裕層を含む訪日観光客の"旅ナカ"に絞ってアプローチできるメディアとして今、注目が集まっている。その全貌と、急速なビジネス規模拡大の理由について聞いた。
訪日客の"旅ナカ"にアプローチ 手の平で起きるO2O戦略
旅行業界・ホテル業界にとって革新的な新たな通信サービスが、注目を集めている。ホテル客室備え付けの無料レンタルスマホ「handy(ハンディ)」だ。日本全国23万以上の客室と契約し、その8割超が四つ星以上のホテル。「handy」の導入された客室の宿泊者は、客室内に限らずホテルの外へも持ち歩いて、旅行中の情報取得を「handy」の端末を通して行うことができる。
海外からの訪日観光客がもっとも困るのが、Wi-Fi接続だ。「handy」を活用すれば無料でインターネットに接続ができ、地図や観光情報の検索、SNSへの投稿も可能。さらに国内電話と一部の国際電話は通話無料であり、訪日観光客にとっての利便性は抜群だ。さまざまな言語に対応した地域情報ガイドとしての機能も持ち、端末レンタルサービスでありながら、訪日観光客の"旅ナカ"に絞って情報提供するメディアにもなっている。
「handy」サービスの発祥は、香港のベンチャー企業、ティンク・ラボ。ホテルの客室に目をつけた創業者が2012年に起業、台湾の鴻海精密工業グループが出資したことで世界展開が一気に進んだ。現在は香港やシンガポール、欧州など世界80カ国に展開し、グローバルの旅行者にリーチできるメディアとしても注目されている。
その中でも、いま日本が世界最大規模の端末導入数を誇るほどに成長している。ティンク・ラボに加え、日本では鴻海の子会社であるシャープが出資して2017年7月にhandy Japanとして事業開始。日本で貸し出す端末はシャープが提供している。
しかし日本でのサービスが稼働したのはわずか8カ月前だ。この短期間で日本のホテル市場の30%のシェアを獲得している。なぜ、これほどまでに急速に広がったのだろうか。
前述のとおり、観光客にとっての利便性が高いことはもちろん、「導入するホテル側にとってもメリットが大きいサービス設計になっている」とhandy Japanの岩田行雄氏は話す。
ホテルと連携し、ビックデータ活用 顧客理解を支援する
「『handy』はホテルサービスの向上にもつながります。『handy』でルームサービスやアメニティを注文でき、外出先であっても『handy』を通じてコンシェルジュとすぐに連絡がとれる。また、ホテル側から伝えたい商品情報やメッセージを『handy』上でプッシュ方式で発信できるため、ホテル内の施設やレストランの利用を促すこともできるのです」と岩田氏は解説する。
さらに「handy」を通じて得られる行動履歴データから、これまでホテル側は関与できなかった宿泊客の"ホテルの外での行動"を宿泊客の属性と照らし合わせつつ、定量的・電子的に理解を深めることができる。今後はホテルシステムと連携して、スマートロックやインルームコントロールなど客室設備のIoT化の支援を行うことも予定しているという。
レンタル料金は1台当たり月額980円でホテル側が負担する。宿泊客の個人情報をホテル側が把握している上、GPS検索できるため、盗難のリスクも低い。グランドハイアットやリッツ・カールトン、帝国ホテルなどさまざまな高級ホテルの客室で導入が進んでいる。
IT化が急務とされる旅行・ホテル業界において、ホテルと観光客、双方の課題を解決し、利便性を高めている「handy」サービス。急速に日本で普及したこともうなずける。
富裕層向けのシティガイド 世界のブランド広告主が活用
「handy」はレンタル料金に加えて掲載する広告、チケットなどを販売するEコマースで収益を得る。「handy」を利用する6~7割が海外からの旅行者で、中国、米国、香港、マレーシア等、多岐にわたるため、グローバルの旅行者の"旅ナカ"を狙って情報を提供できると、さまざまな企業から注目が集まっている。
「広告はバナー広告とシティガイドの記事広告に加え、プッシュメッセージの3種類を用意。旅行客の現在地や時間帯に合わせて最適なプッシュ広告を表示することができます」(岩田氏)。
また、「handy」で配信されている「LUXOSシティガイド」は富裕層の読者を意識した情報メディアとなっている。クライアントも、大手マスブランドやハイブランドが多く、「富裕層向けのトーン&マナーを意識したメディアなので、ブランディングを行いつつも店舗への来店を促すようなO2O施策としての活用のされ方をしている」(岩田氏)とのこと。
旅行者向けの情報アプリは多々あるが、スマホにインストールさせるまでのハードルが高く、活用してもらうのに苦戦しているメディアも多い。一方、「handy」は、目的地に特化した旅行コンテンツがすでに準備された状態のスマホを貸し出し、位置情報に応じて必要な情報を通知する。富裕層向けのシティガイドとして、訪日観光客へ効率よくアプローチできる点が広告媒体としての特長だ。
「handy」は端末を貸し出すことで通信環境を提供し、多言語での観光情報を発信する。端末から取得した行動データを旅行者のプロファイルに照らし合わせれば、今後の訪日観光客への施策に活用できる。これらの利点には、自治体やDMO、日本政府観光局も期待を寄せる。神奈川県を筆頭に自治体とも提携を結び、サービスの領域を観光地にも広げる試みを行っているところだという。
「旅行や観光のあらゆるタッチポイントで『handy』の活用を進めていきたい」と岩田氏。訪日観光客のさらなる増加が見込まれる中、旅行業界やホテル業界を革新する新たな通信サービスとして注目だ。
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