アメリカンフットボールリーグ・NFLの優勝決定戦であり、広告界でも注目度の高いイベントのひとつ「スーパーボウル」。テレビ中継は毎年、その年の年間最高視聴率を記録する。今年、中継枠へのCM出稿企業は59社にのぼった。ここでは、編集部が注目した5ブランドのCMを紹介する。

01 自動車広告は誇大表現ばかり?
「マニフェスト」に例えて大胆に批判
ジープ「Anti-Manifesto」

老舗自動車メーカーであるジープは、スーパーボウルの中継枠にほぼ毎年CMを出稿している常連企業のひとつだ。今年も複数のCMがオンエアされていたが、今回取り上げたいのは「Anti-Manifesto」である。
このCMは、クロスカントリーSUV「ラングラー」の宣伝なのだが、他の自動車広告とは少し様相が異なっている。
使われている映像は、1台のラングラーが湖を渡っていくというワンカットのみ。BGMはなく、音声はナレーションだけという非常にシンプルな構成だ。淡々と語るその声は、ラングラーの魅力をアピールしているわけではない。いや、むしろ、ラングラーには一切言及していない。無駄に飾り立て、大げさな言い方をしている、一般的な自動車広告を批判しているのだ。
他社の自動車広告によく見られる「壮大なスピーチ」や「人間の真実に関する主張」を嘲笑し、このCMはそういった「マニフェスト(声明文)」のようなものではない、ということをアピールしている。
誇大表現にあふれた自動車のCMを「マニフェスト」と呼びながら、アメリカ現大統領のことを意識していることは明らかだ。大げさな演出は、内実を伴っていなければ、たちまち陳腐なものに思われてしまう。商品そのものへの自信や誇りがあれば、誇張表現などの宣伝的な要素を限りなく排除することができるのだ。
この痛烈な批判に賛同する人は多く、「これだからジープは大好き」という声も上がっている。他社の自動車広告の批判と見せかけながら、世の中にはびこる誇張表現に対する皮肉をさりげなく織り交ぜた、勇気ある表現だと言えるだろう …