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私の広告観

ヨシタケシンスケさんに聞く、世の中の面白い一面を見つけるコツ

ヨシタケシンスケ

大人からも人気の絵本作家、ヨシタケシンスケさん。ヨシタケさんの描く絵本は、クスッと笑顔になるようなユーモアの中に背中を押してくれるメッセージが潜んでいる。広告業界で働いた経験もあるヨシタケさんに、共感を生み出す創作の裏側について聞いた。

ヨシタケシンスケ(よしたけ・しんすけ)さん
1973年神奈川県生まれ。筑波大学大学院芸術研究科総合造形コース修了。『りんごかもしれない』で第6回MOE絵本屋さん大賞第1位、第61回産経児童出版文化賞美術賞、『りゆうがあります』で第8回MOE絵本屋さん大賞第1位を受賞。『もうぬげない』で第9回MOE絵本屋さん大賞第1位、ボローニャ・ラガッツィ賞特別賞を受賞。『このあとどうしちゃおう』で第51回新風賞を受賞。その他、著書多数。二児の父。

アイデアはひらめくのではなく理詰めで考える

「ゆるくてかわいい」「自分もあるある!」など読者の共感が世代や性別を超えて世の中に広がっているのがヨシタケシンスケさんの創作ワールドだ。日常のありふれたひとコマを、独特の視点でユーモラスに切り取った絵本やスケッチ集、装画、イラストエッセイは、1冊読むとまた別の本をすぐ読みたくなる素敵な魅力に満ちている。

絵本デビュー作は『りんごかもしれない』(2013年、ブロンズ新社)で、第6回MOE絵本屋さん大賞第1位、第61回産経児童出版文化賞美術賞を受賞。NHK「みんなのうた」で放送されたピクソンさんの歌う「恋なんです」(2015年)では、小学生の淡くて甘酸っぱい初恋を描き、初のアニメーション作品として動く絵本動画を発表した。以降、ヒット作品を多数生み出し続けている。

そんなヨシタケさんのアイデアの源泉は、どのように湧いてくるのだろうか。

「僕の場合はアイデアをひらめくというよりは、理詰めで考えるタイプです。例えば『あるかしら書店』(2017年、ポプラ社)という絵本では、"本にまつわるものなら何でもいい"とテーマに縛りがなかったので、まずは『本とはなんだろう』というところから考えました。『本って四角いよね、それはなぜだろう。昔は四角じゃなかったのかもしれない…』とひとつのテーマから、要素を反転させたり、拡大したり縮小したりして、考えを深めていきます。また、エッセイにイラストをつける場合には、文脈を読み、そこから遠からず近からずの落とし所を見つけて、文章に奥行きを出すようなイラストを描くようにしています」とヨシタケさんは話す。

読者が求めるものを探すのではなく、まずヨシタケさん本人が描いていて楽しいか、面白いと思えるかどうかが創作のカギになっているのだ。

ヨシタケさんが絵本作家として活動を始めたのは、約4年半前だ。それまでは広告美術での立体模型や造形をつくる職場で働き、夜は雑誌社などの依頼に応えてエッセイの挿絵やイラストなどを描くイラストレーターとして15年間にわたって仕事をしてきた。そういった長く地道な鍛錬こそヨシタケさんの創作活動の礎になっている。

「イラストの仕事と絵本づくりの違いは、商業的なイラストの仕事にはお題が用意されているということです。『一冊の本を読んでその内容を1枚の絵にしなさい』『この文章を噛み砕いて絵で説明しなさい。あるいは文章の足りない点を絵で補いなさい』など、お題には必ず課題が提示されています。その課題をきちんと解決した上で、言われていないプラスアルファを追加して提案するのが自分の仕事だと思っていて、そういう意味でイラストレーターというのはデザイナーの領域と近いところがあるように思います」。

モノの見方で人生は変わる?コンプレックスを仕事の糧に

社会への大事なメッセージや日頃、誰しもが疑問に思っていることのヒントを、ほのぼのとした語り口とイラストで伝えるヨシタケさんの作品は、心にストンと響いてくる妙味がある。

そんなヨシタケさんも幼少時代は自我が弱く、何かを成し遂げたいという目標や意見を持たない受け身な少年だったという。

「僕は人に怒られることが極端に嫌いなところがあり、言われたことは受け入れてしまう性格でした。親に『塾に行け』と言われたら行くし、だから成績も悪くなかったんです。ただ、やりたくないことはいくらでも思いつくのに言うことができず、一方で自分がやりたいことは決められない。だから目標を定めて突き進むタイプの人がキラキラと輝いて見えました。その頃から自分の不甲斐なさ、もどかしさが僕のコンプレックスになっていました」 …

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