トライベック・ストラテジーは昨年12月、「デジタルマーケティングの未来」をテーマとしたマーケター向けのセミナーを開催した。登壇企業が口を揃えたのは、デジタルやテクノロジーありきではなく、「顧客の経験価値を高めるために何をするか」という発想からスタートすることの重要性。各社の最新の施策を概観しながら、2018年にマーケターが重視すべき「エクスぺリエンス・クオリティ」について、参加者が理解を深める場となった。
デジタル時代の今こそ立ち返りたいマーケティングの本質
第1部に登壇したのは、トライベック・ストラテジー 代表取締役の後藤洋氏。オープニングキーノートとして、2017年のデジタルマーケティングの概況を振り返りながら、2018年に目指すべき方向性を示唆した。
特に強調したキーワードは「エクスぺリエンス」。ユーザーと企業の間に生まれる経験・コミュニケーションの価値をいかに高めていくか、そのためにデジタルテクノロジーをどのように活用するかを、企業は考えるべきだと話した。「企業にとって重要なのは、ユーザーに共感してもらい、好感を持ってもらうこと。それを実現するためのエクスぺリエンス・プラットフォームとして、デジタルはますます不可欠なものとなってきている」と力を込めた。
一方で、デジタルが偏重される昨今の状況には警鐘を鳴らす。
「2017年は、テクノロジーへの期待が一層高まる中、テクノロジーに"踊らされてしまった"企業も少なくなかったように思う。企業は今一度、マーケティングの本質に立ち返るべき。自社のサービスやコミュニケーションが、お客さまの意思や感情をきちんと考慮したものになっているか、見直すことが必要だ。デジタルやテクノロジーありきではなく、『エクスペリエンス・クオリティ』をいかに高めるかを起点に戦略や施策を考えてほしい」と話した。
第2部では、KDDIの野島拓也氏とUQコミュニケーションズの西山暢一氏が、後藤氏と共に登壇。両社の最近のマーケティング施策のポイントを概観しながら、トライベックが2018年の重要キーワードとして掲げる「ヒューマン」「ブランド」「データ」について意見を交わした。
野島氏は「KDDIとして、お客さまに何を提供するべきなのか。常に、カスタマーエクスぺリエンスの質をどう高めるかを起点に考えている」とし、経験価値を高めることに成功した施策を紹介した。
また、前出の3つのキーワードの中では「ヒューマン」が特に重要だと指摘。「デジタルやテクノロジーの話題に触れるたびに思うのは、それを活用する『ヒューマン』、お客さまと向き合う当社メンバーの心が非常に重要だということだ。デジタルやテクノロジーを偏重することなく、『ヒューマン』と『エクスペリエンス』に重点を置いて施策を企画・実行していきたい」と話した。
西山氏が紹介したのは、UQの認知度をたった1年半で24%から90%に引き上げた、独特の世界観のテレビCMを中心としたコミュニケーション戦略。また、利用満足度が高いことを生かし、顧客とともに評判をつくり広げていくコミュニティサイトの運営についても言及した。2018年の重要キーワードとしては「ヒューマン」と「データ」を選んだ。
後藤氏は「両社ともインパクトのあるアウトプットに注目が集まりがちだが、その根底には、お客さまを中心に置いた緻密なマーケティング戦略がある」と結んだ。
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