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弘兼憲史さん、中森陽三さんに聞く、パナソニック宣伝100年の軌跡─企業の広告篇 ​

パナソニック

2018年に創業100周年を迎える、パナソニック流の宣伝に迫る対談。最終回は「企業の広告篇」です。『良い商品はいち早く人々に知らせる』という創業者・松下幸之助の考えに基づき、様々な形で宣伝活動を続けてきたパナソニック。商品だけでなく、社会課題に対する考えや取り組みについても「企業広告」として発信してきました。

今回は、同社の元社員であり、漫画家の弘兼憲史さんと、企業広告の制作に携わったアートディレクター・中森陽三さんの対談です。

(左)弘兼憲史さん(右)中森陽三さん

国際社会の一員としてパナソニックが訴えてきたこと

──1930年、社長メッセージがつづられた新聞広告が掲載されました。

弘兼:松下幸之助さんの直筆の署名が入っていますね。経営の考え方を示すとともに商品を紹介し、信頼につなげようとする意図があったのでしょう。幸之助さんが唱えた「水道哲学」を思い出します。良い商品を水道から出る水のようにどんどん世の中に送り出し、お客様に使ってもらって、世の中をより良くするという考え方ですが、利益はあくまで社会に貢献した結果として得るもの、そうした思いが反映されているように感じますね。

中森:パナソニックにとって企業広告は、経営の「芯」となるものを表しているのでしょうね。80年以上も前の広告からも、今につながる「信念」がしっかりと伝わってきます。

1930年 新聞「電氣コタツに就て」

──1960年代に入ると「貿易の自由化」や「適正な競争」に対する意見広告も発表しています。

弘兼:広告を通して経営者としての考えを示しているのがよくわかります。「実は熟した」というコピーで貿易の自由化を訴える新聞広告は、技術や商品に対する自信が感じられますね。「儲ける」というコピーの広告は、適正な競争や共存共栄といった、現代でも十分に通用することを語っています。

中森:「儲ける」はストレートな表現ですが、読ませる力がある。自分たちだけが私腹を肥やすのではなく、分け合うことでみんなが幸せになる循環について語りかけていて、企業の思いの強さがにじみ出ています。

弘兼:幸之助さんの顔写真が大きく出ている広告もあったのですね。

中森:メガネ屋さんとのエピソードがつづられていますよ。トップの顔が見える広告は、企業が身近に感じられ、説得力があります。

弘兼:「日本の経済に奉仕してゆくことをお約束いたします」と書かれているとおり、会社が大きくなっていくにつれ、日本全体に目が向いていったということでしょう。私が当時の松下電器産業にいた頃、幸之助さんが社員の前で、これからの業界全体を展望した方針を話されていた記憶がよみがえってきました。

私が入社したのは、大阪万博で松下館が人気を博した1970年。販売店向けのカレンダーやナショナル坊やの人形、ポスターなどを制作したり、ブランドロゴをつくったり、企業ブランドを高めて販売を助成する部署にいたんです。

中森:販売店の方が自信をもってお客さまに対応している姿を見ると、ブランドを高める広告は大事だと実感できますよね。モノをつくっている人の自信を高めるだけでなく、売る人も含めて納得する広告をパナソニックはつくってきたのだと思います。

1965年 新聞「儲ける」

──80年代に入ると心の充足につながる技術を意味する「ヒューマン・エレクトロニクス」など、スローガンを打ち出す広告が目を引きます。

弘兼:創業者のメッセージを強烈に示す広告から、社会貢献への取り組みを伝える柔らかな広告へと表現が変化しています。今ではコーポレート・アイデンティティという言葉が使われますが、パナソニックは初期の頃から、会社の存在意義を広告で表してきた会社です。企業は社会に貢献し、すべてのステークホルダーのためにあるべきだという姿勢を明らかにしていますよね。

──中森さんがアートディレクションを担当した「いつもSOMETHING NEW」をスローガンにした87年の広告は登場感がありました。

中森:新しいパナソニックブランドのインパクトのある浸透と、AV機器を若者向けに訴えていく広告で、映画監督のジョージ・ルーカスさんに、ライトセーバーを持って、『スター・ウォーズ』の象徴的なポーズで登場してもらいました。

弘兼:「僕の夢に、負けないでほしい。」のコピーもいい。

中森:見る人のイメージが膨らんで、新しい夢を描けるような広告を目指しました。

生活に密着した視点で企業姿勢を伝える

──2000年代になると、環境をテーマにした企業広告も目立ちます。

中森:エコが世界的に注目されるようになって、環境を無視した商品づくりは、もはや考えられない時代になりました。私が担当した、環境に対する姿勢を表した新聞広告シリーズも、商品をつくる段階からムダなエネルギーを使っていないこと、それは地球環境のために必要なことであり、企業の使命でもある、ということをリアルな写真とコピーでしっかりと読んでもらえるようなデザインを心がけました。

弘兼:商品にまつわる環境の取り組みや考えを、生活に身近なエピソードを通じて伝えた広告ですね。

中森:環境への配慮は今に始まったことではなくて、パナソニックの原点である二股ソケットも光の量を適正にして無駄をなくそうとしていた。そのことを訴えた「節電60年」という広告も印象に残っています。

2001年 新聞「家電リサイクル法」

──企業姿勢を表す代表的な場として正月の新聞広告があります。最近ではアスリートの起用もありました。

弘兼:2015年の正月広告は「この世界をワンダーに。」のコピーとともに、サッカーのネイマール選手が登場してますね。ネイマールといえば、世界的にはまだ無名だった頃に、ブラジルのパナソニックがいち早く広告に起用していました。『社長 島耕作』の取材で現地に行ったときに、「絶対に有名になるから」と教えられましたが、そのとおりになりました。

中森:オリンピックやパラリンピックへの協賛も含めて、スポーツへの支援は、平和で明るい社会をつくるために貢献する、というパナソニックの姿勢を印象づけるのに役立っていると思います。これからも、世界各地でコミュニケーションをされるにあたり、こうした活動をより深めていってほしいと思いますね。

2017年 新聞 正月広告

──企業広告の役割や今後については、どのような考えをお持ちでしょうか?

弘兼:経営の効率化が求められると、企業広告にお金を投じにくくなりますが、ブランドに対する信頼を得るという大きな役目を担っています。パナソニックは積極的に企業広告をしてきた会社。社会への貢献を表明することで、イメージづくりに確実に貢献してきたと思います。

中森:広告には、商品や企業を伝え、経済を支えると同時に、文化でもありメディアの活性化に役立つという大きな役割もありますね。広告が元気だとメディアも元気になり、社会にも潤いを与えるわけですから。

弘兼:そうですね。一方で、例えば復興支援のように、マスメディアを通さない社会貢献活動も出てきていて、企業ブランドを高めるコミュニケーションは様々な形があると思います。

中森:取り上げるものにしても、地球環境問題をはじめ、高齢化や少子化、医療や介護など、今の時代に欠かせない大きなテーマがいろいろとあります。これからの新しいパナソニックの活躍に期待は高まります。

弘兼:メディアの使い方やテーマは時代によって変化しても、自社だけでなく社会も栄える、共存共栄を目指す、という企業の意志を、これからの100年も伝え続けていってほしいと思います。

Future 100年先も「日に新た」

1918年に創業した松下電気器具製作所は、名をパナソニックと変え、今年100周年を迎えました。高度経済成長や震災といった激動の時代を経てもなお、社業を続けられたのは、お客様のご愛顧のおかげに他なりません。

第1号の商品であるアタッチメントプラグは、お客様により便利に電気を使っていただき、くらしを豊かにするためにつくられました。現在は、家電・住宅・車載・BtoBなどの分野で、お客様の「より良いくらし」を広げ、「より良い社会」を支えていくため、進化を続けています。現在の「A Better Life, A Better World」のスローガンは、創業者の「事業を通じて生活の向上に貢献する」という思いに通じます。

100年の間に言葉や手法は変わっても、目的は同じ。お客様のくらしのために、日に新た、止まることなく進んでいく。それが、これからも変わらない、パナソニックの原点です。

2018年 新聞 正月広告

企業宣伝年表


編集協力:パナソニック株式会社

弘兼憲史(ひろかね・けんし)
漫画家。ヒロカネプロダクション代表取締役。早稲田大学卒業後、旧松下電器産業勤務を経て、1974年に『風薫る』で漫画家デビュー。以降、『人間交差点』『課長 島耕作』『黄昏流星群』などヒット作を次々に発表し、現在に至るまで漫画界の第一線で活躍している。

中森陽三(なかもり・ようぞう)
アートディレクター。中森デザイン事務所。1959年、多摩美術大学卒業後、博報堂、髙島屋などの勤務を経て、独立。「ルーカスキャンペーン」をはじめ、パナソニックの様々な広告制作に携わった。ADC賞、広告電通賞、日経広告賞、毎日広告デザイン最高賞、読売広告大賞など受賞多数。

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