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クリエイティブの「種」、のようなもの

「不便」という体験をデザインする

資生堂 小助川雅人

人々の心を揺さぶり、行動を喚起することを目的とする「広告」。まだ誰も見たことがない新しい表現を通じて、自社ブランドの魅力を強烈に訴求することを求められるインハウスクリエイターは、日々、どのような物事からインスピレーションを得ているのでしょうか。資生堂 クリエイティブ本部の小助川雅人氏が、「広告」の枠組みにとらわれず「気になった」ものを毎回セレクトし、クリエイティブワークに生かせそうなポイントを考察します。

「不便益」という言葉をNHKの番組で知った。「不便益」とは"benefit of inconvenience"、つまり「不便で良かった」と思われること。番組の中では、社内のコミュニケーションを増やすためにあえてガラケーを使わせる会社、お客さまに丁寧な手書きのダイレクトメールを出すジュエリー会社などが取り上げられていた。

不便益を考えるには、まず「便利損(というのかどうか)」を考えてみるのがわかりやすい。自分のことを考えてみても思い当たることはいくつもある。

例えば漢字力。私は俳句をやっているので、句会などでは手書きしなければならない。しかしWordの変換機能に依存しすぎて、漢字が書けなくなっていることを痛感する。1日まったく手書きの文字を書かない、という人も多いかもしれない。

他には構成力。ワープロ以前、長文を書くのは原稿用紙だった。間違ったら、最初から書き直さなければならない。そのためには、かなり緻密に頭の中で構成を考える必要があった。今ではある程度の流れが見えれば(見えなくても)後から切り貼りすれば何となく形にはなる …

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