コミュニティの分散化が進む現代を、「コミュニティの小宇宙」と称するファイブ 代表取締役CEOの菅野圭介氏。現状を踏まえたクリエイティブ・プランニングの手法について、考えます。
コミュニティ分散化の流れは止まらない
フィルターバブルやフェイクニュース。2016年の米大統領選にまつわる騒動を引き合いに出さずとも、スマートフォンが世界を呑み込み終えた今、私たちのインターネットは「究極のコミュニティ分散化時代」を迎えました。つまり、誰でも使うデバイスやサービスはあるけれど、誰でも知る・賛同するトピックは事実上なくなったという状況です。
デジタルプロモーション手段の主力であるソーシャルプラットフォーム群は、圧倒的な利用者数を抱えるまさにマス・サービスですが、フォロー・フォロワー関係の中で、利用者が属する人間関係に閉じて情報が流通する環境です。同じサービスを世界で数億人が使っていても、誰ひとりとして同じタイムラインを見ることは決してなく、アルゴリズムによってハイライトされた人気トレンドは一日で賞味期限を迎えていき、"皆"にリーチすることがきわめて難しい状況です。
ここに加えて、プラットフォーム上では個人が媒体化したインフルエンサーが生まれ、大小さまざまなコミュニティを形成しファンユーザーと直接交流を持つことが当たり前になりつつあるのです。
さらに、こうしたプラットフォームレイヤーと併存する形で、さまざまなテーマを「タテ」に深掘りしながら数百万人を抱えるスマートフォンアプリが急増しています。さまざまな分野で、これまで雑誌媒体が担ってきたようなライフスタイル需要を取り込みながら、緩やかなコミュニティを形成してきています。さながら無数の惑星が交わることなく点在する小宇宙空間のように分散・分断されているコミュニティです。
企業のマーケターにとっては、セグメントされた一部の人々にアプローチするには便利ですが、コミュニティを超えたヒットや話題喚起を目指すことが難しい環境です。
一方で、細かい施策の積み上げばかりだと、手間や制作費を含めた全体ROIが悪化してしまう恐れもあります。限られた資源・予算で、どのように合理的にプランニングをしていくべきなのでしょうか。
考えてみれば、それぞれのコミュニティは「好き」を軸にすでにターゲティングされている場所です。この場に集う人々の気持ちを動かすためには、ターゲティング技術よりもクリエイティブの力が必要です。大げさに言えば、人を数量的に扱ってきたデジタルマーケティングが苦手としてきた、クリエイティブの復権です。
自分の好きなコミュニティでは文脈が重視されます。「好き」や「熱量」が集まっているコミュニティの気持ちを想像して、クリエイティブを文脈に合わせてつくり込むことは、実はトータルの広告効果で考えてもROIが高いのです。なぜなら、「皆のため」のメッセージが届きづらい中で、「自分のため」のメッセージはとても反応が良いからです。事実、コミュニティの文脈に沿うと、広告はきちんと効きます。
逆に「自分」に関係がないと思われれば、一瞬でスクロールアウトされてしまいます。当社が提供するブランド構築ソリューションの「*Moments by FIVE」では、コミュニティ視点を取り入れるかどうかで動画広告で10倍以上の視聴率の違いが出ることもあります。
コミュニティ充足型のプランニング例
限られた予算内で、コミュニティを充足させる「自分のため」のメッセージは具体的にどのようにつくることができるのでしょうか。当社の過去500以上の動画広告キャンペーン実施例では、大きく図表1のような例があります …