「ネスカフェ ゴールドブレンド」が発売されたのは、高度経済成長期の真っただ中の1967年。日本の消費者の生活水準が向上し、コーヒーに求める品質も高まっていた。そこで、同社が開発したフリーズドライ製法で香りの良さを実現し、1960年に発売したインスタントコーヒー「ネスカフェ(現・ネスカフェ エクセラ)」の上位ブランドとして投入された。
同社 飲料事業本部 レギュラーソリュブルコーヒービジネス部 部長の島川基氏は、「2つのブランドによって、喫茶店でしか飲めなかった嗜好品の象徴であるコーヒーを家庭に浸透させることができました」と、当時について話す。
さらに日本人の生活が変化するなかで、コーヒーの飲み方も変わっていく。ドリップタイプのレギュラーコーヒー、粉末のスティックタイプ、さらにペットボトルタイプと形状が増加。その中で、「ゴールドブレンド」も転換期を迎える。
少子高齢化や核家族化が進みコーヒーが少人数で飲まれ、さらに共働きの世帯の増加で自宅にいる時間が減少。こうした変化を受けて、2009年に「ネスカフェ ゴールドブレンド バリスタ」を顧客限定で発売(翌年・全国販売)。ボタンを押すだけで1杯分のコーヒーが入れられるマシンを開発し、従来よりも手間を掛けずに飲めるようにした。
また2012年には、専用カートリッジの定期購入でオフィスなどでマシンを無料で使用できる「ネスカフェ アンバサダー」のサービスを開始。家庭外の場所でコーヒーを浸透させていく戦略を立て、飲用シーンを拡大させた。「我々のビジネスモデルをプロダクトから、サービス提供に進化させることができました」(島川氏)。
一方で、課題も生まれた。インスタントコーヒーを普及させてきた同社だが、「インスタント」という言葉の持つ印象から、消費者がレギュラーコーヒーよりも品質が悪いというイメージを持つようになる。
「目隠しをした状態で消費者の方に試飲していただく調査では『ゴールドブレンド』がレギュラーコーヒーに味で負けることはなかったので、品質には絶対の自信がありました。そこでイメージの転換を図るために、2013年に『ゴールドブレンド』を始めとする主要商品を、微粉砕したコーヒー豆を包み込む独自製法を採用した『レギュラーソリュブルコーヒー』へと刷新しました」(島川氏)。
現在は、「ネスカフェ」といえば「ゴールドブレンド」が連想されるほど、同社を代表するブランドに成長している。
視点01 商品開発
IoT対応のコーヒーマシンを発売し、『1on1』のサービスを提供
消費者の変化に対応して、味わいを常に変えていった。特にこだわったのが、コーヒーの香りだ。島川氏は「コーヒー豆を粉末化させる段階で、どうしても本来の香りが逃げてしまいます。その香りを閉じ込めるために、技術革新を続けてきたのが『ゴールドブレンド』の歴史です」と自信を見せる …