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復活を遂げたブランド戦略

カルビー フルグラ、「朝食市場」参入で売上が35億から300億円規模へ

人々のライフスタイルの変化、市場環境の変化、そして商品自体のライフサイクルのステージによって、ブランドを取り巻く環境は大きく変わります。ロングセラーながら変化をチャンスにし、新たな市場を開拓し、成長を遂げる2つのブランドの軌跡を追います。

──カルビー「フルグラ」

1991年に発売し、今年27年目を迎える、グラノーラブランド「フルグラ」。2017年3月期で約292億円の売上を誇り、カテゴリー売上ナンバー1ブランド(インテージSRIデータ:シリアル2017年1月~2017年12月売上金額)として、現在も成長を続けている。

しかし、フルグラの売上規模は、発売直後は約10億円(当時は「フルーツグラノーラ」)、それから20年が経った2011年は約35億円と、50~100億円規模のブランドが数多く存在するカルビーにおいては、決して売上規模の大きなブランドとは言えなかった。

1964年発売の「かっぱえびせん」、1975年発売の「ポテトチップス」に続く、カルビーの3本目の柱をつくる狙いで投入したグラノーラだったが、2000年以降は売上が横ばいの状態が長く続いていたのだ。

「シリアル市場の規模は250億円ほどが限界とされていた中で、30億円を占めていたのですから、決して当時の売上が悪かったとは言えません。しかし、社内で存在感があるブランドというわけでもありませんでした。発祥の地である米国と比べ、日本ではシリアルの認知率も喫食者の数もまだまだ圧倒的に少ない。あまりに簡単に用意できてしまうことから、“手抜き”と思われるのではと、家庭の食卓を担う方々から敬遠されがちでもありました」と、フルグラのブランドマネージャー・香山宏氏は振り返る。

巨大な「朝食市場」に参入 まずはカテゴリー認知向上を目指す

大躍進のスタートは、2011年。同年に代表取締役会長兼CEOに就任した松本晃氏が、「フルグラは、もっと売れるはず」とブランドのポテンシャルを見出し、売上規模100億円という目標が掲げられた。

最も大きな方針転換は、「シリアル市場」ではなく「朝食市場」を主戦場としたこと。パイが限られたシリアル市場でのシェア争いに甘んじるのではなく、より大きな舞台である朝食市場への進出を考えたのだ。

それまでのシリアルやグラノーラは、「朝食が十分に摂れないときに、簡単に食べられる」という位置づけだった。しかし、欠食率が約10%であるというデータから類推される朝食市場の規模は約17兆円。より大きな市場で勝負をしていこうと、戦場を変える決断をした。その結果、2012年は前年比170%の63億円を達成、2013年には早くも目標の100億円を達成した。

その間、テレビCMなどマス広告は展開せず、商品ラインアップの拡大もしていない。2011~2013年の大躍進は、カルビーのスナックカテゴリーにおける主たる戦略である「広告」と「新商品開発」ではなく、「戦略PR」によって成し遂げられたのだという。

「未認知・未経験者の割合の高さが、大きな課題でした。2011年当時、フルグラを含むシリアルの未体験者は、実に7割以上にのぼったのです。朝食としてフルグラを選んでほしいと思っても、普段ごはんやパンを食べている人にいきなり『シリアルに切り替えてください』と言ったところで、行動を促すことはできないでしょうし、ましてや、最初から『フルグラを食べてください』などというのは無理があります。まずはシリアルというカテゴリーを認知・理解してもらうことが不可欠だと考えました」(香山氏)。

単に「知らない」というだけでなく、偏ったイメージが喫食機会を阻害している状況もあった。グループインタビューでは「朝食らしくない」「味気なく、美味しくなさそう」といったネガティブな声が少なからず挙がったという。ブランドを売り込むより、まずはカテゴリーイメージを改善すること。それがフルグラのとった新しいマーケティング戦略だった。

カテゴリーイメージの改善は、すなわち「売れるための環境づくり」とも言える。そのためには、客観性や信頼性の高いメディアを活用し、ニュースとしてシリアルやグラノーラのポジティブなイメージを伝えていく必要がある。フルグラが戦略PRを重視した理由は、そこにあった。

かつ、BtoBとBtoC、どちらのメディアにもアプローチすることを念頭に置いていたという。「流通のバイヤーの方にアプローチし、販路を拡大すること。そして、消費者にアプローチし、店頭で目にしたときに手に取ってもらえるよう、シリアル・グラノーラに対する心理的ハードルを下げること。これをそれぞれ、同時に行うことが重要だったのです」。

始動期の戦略PRは、通称「オトモダチ作戦」。グラノーラを朝食の主役とするのではなく、当時すでに多くの人に朝食として食べられていたヨーグルトと一緒に食べてもらおうというわけだ。ごはんやパンに次ぐ、朝の定番メニューと結びつけることで、トライアルの機会を増やし、美味しさを知ってもらう狙いがあった。

ヨーグルトにグラノーラを加えることで、食感や栄養をプラスし、食事としての存在感・満足度を高めることができる―グラノーラのそんなポジティブなイメージが、メディアを通じて「グラノーラブームの兆し」というニュースとともに、多くの人に知られるところとなった。

フルグラファンをつくった3段階の戦略PR

フルグラのレシピ本。グラノーラファンをフルグラファンに変える戦略PRの一環で出版された。

一定のカテゴリー認知を獲得した後は、3つのフェーズにわけて引き続き戦略PRを展開。これによって、グラノーラファンをフルグラファンに変え、さらにフルグラを食べることを習慣化させることにも成功したのである …

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