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ブランド拡張のメリット、デメリット

ブランド拡張を考える前に、マーケターは「らしさ」を理解すべし

千葉商科大学 増田明子

ブランド拡張は、消費者、メーカー、小売・流通業それぞれのメリットがある。一方で、デメリットもあるため、取り組む企業は注意も必要となる。千葉商科大学 人間社会学部の増田明子准教授に解説してもらう。

キッコーマン「調製豆乳」は、麦芽コーヒー、バナナなど味の他、容量(500mlなど)、カテゴリー(豆乳仕立てのコーンスープなど)にも拡張している。

代表的な手法はライン拡張とブランド拡張

ブランド拡張(Brand Extension)とは、「既存ブランド名を用いて、新しいブランドをつくること」を言います。既存ブランド名に消費者が知識やなじみを持つ場合に、ブランド拡張による新ブランドの展開では市場に出す際の失敗のリスク(*1)を減少させることができます。ゼロからの商品開発による新ブランドに比べて、ブランド拡張による新ブランドは、既に企業が開発した商品を活用するため、流通獲得にかかるコストは少なく、プロモーションの効率も良いと言われています。

*1:少し古いデータとなりますが、アメリカ市場では年間17000もの新しい商品が出るにもかかわらず、85%が失敗すると言われています(Iyer et al.2006)。

もともとはブランド研究の世界では「ブランド拡張」は、既存商品とは別のカテゴリー拡張を指していましたが、最近では概念が広がり、ライン拡張もブランド拡張のひとつに含まれています。ちなみにブランド拡張の8割は、ライン拡張だと言われています。

ライン拡張とは、同じ商品のカテゴリー内での拡張をいいます。例えばキッコーマン豆乳の「調製豆乳」は1979年に発売されて以来のロングセラー豆乳ですが(*2)、この商品を既存ブランドとすると、同じ商品ライン内でのブランド拡張として、味の異なる「麦芽コーヒー豆乳」、「バナナ豆乳」などがあげられます。味だけでなく、特定保健用食品などの機能や、500mlや750mlという容量による拡張展開も見られます。

*2:調製豆乳は、もともとは1979年に紀文食品より発売され、紀文のブランドマークが2015年までついていました。2004年に紀文食品グループとキッコーマンが資本・業務提携。2006年に豆乳を製造していた紀文フードケミファがキッコーマンの子会社となりました。キッコーマンソイフーズと社名を変更した後も紀文ロゴは使用されていましたが、2015年のパッケージ変更により紀文のロゴが消えました。

カテゴリー拡張は …

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