米国ダイレクトマーケティング協会が主催する「DMA国際エコー賞」は、1929年にスタートした歴史あるコンペティションだ。審査基準は、「卓越した戦略」「難関を突破する制作物」「驚異的な結果」の3点。アイデアの素晴らしさもさることながら、圧倒的なレスポンスを得た受賞キャンペーンを紹介する。
01 最高賞 ダイヤモンド・エコー・アワード
「病気の子どもは弱い」なんて、誰が決めたの?
シックキッズ基金「100 Today」
1000以上ものエントリー作品の中から頂点に輝いたのは、難病の子どもを支援するシックキッズ基金による寄付促進キャンペーンだ。他2部門でもゴールドを受賞し、今年の最多受賞キャンペーンとなった。
手がけたのは、カナダのマーケティング&コミュニケーションカンパニー Cossette。社員700人未満の中規模エージェンシーだが、その実力は大手に劣らない。2017年度のクリオ賞でも複数の事例で受賞しており、近年勢いを増している。「SickKids VS 100 Today」というメッセージを掲げ、Web広告や屋外広告を中心に展開されたこのキャンペーンは、「病人」のイメージを覆す斬新な表現が注目を集めた。
患者や医師が毎日、病院を舞台に繰り広げる「戦い」がテーマとなっており、それぞれの病気と力強く戦う子どもたちの姿が印象的だ。慈善団体のキャンペーンで多く見られる、共感や同情を誘う内容・表現とは一線を画している。
しかし、秀逸なクリエイティブだけが評価されたわけではない。その裏にある戦略は、目標達成のために緻密に設計されたものだ。基金からの要望は「病院の手術室の増設のため、月次寄付者を30日で3000人増やすこと」だったが、それを「1日100人」という目標に分解。1日という期限によって緊急性が感じられることに加え、自分が寄付したことによる変化が「今日何人目」という形ではっきりとわかるようになる …