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マーケターのための事業構想

香りを「携帯」、新マーケットを開拓

ソニー

ストレス対策への社会的関心が高まるなか、アロマや香りに関する市場が拡大している。ソニーは2016年にパーソナルアロマディフューザーを事業化。男性やビジネスパーソンなど、アロマに馴染みの少なかった新規ユーザー層を開拓している。

ソニーのパーソナルアロマディフューザー「AROMASTIC(アロマスティック)」。ユーザーの半数は男性で、特に忙しいビジネスパーソンに人気。

ソニーが2016年10月に発売したパーソナルアロマディフューザー「AROMASTIC(アロマスティック)」の販売が好調だ。本体は手のひらサイズで携帯可能。上部に香りの入ったカートリッジを差し込み、ボタンを押している時間だけ香りが噴霧されるというシンプルな製品だ。ひとつのカートリッジには5種類の香りが入っており、ダイヤルを回すことで香りを瞬時に切り替えられる。

香りが周りに拡散しないため、気分に合わせて好きなときに、自宅はもちろん職場や移動中など好きな場所でアロマを楽しめる。従来のディフューザーと異なり、香りを持ち運び、ひとりで楽しむという新習慣を創造した。

日本アロマ環境協会の調査によれば、2015年の国内アロマ市場規模は3337億円。ナチュラル志向の高まり、リラックスやストレス対策製品のニーズ拡大などを背景にアロマ市場規模は拡大しているが、アロマディフューザーを中心とした芳香器具は、まだまだ一部の人だけの趣味だ。

「提案の方法次第で、もっと香りの市場を広げられるのではという思いがありました」と話すのは、アロマスティックを発案したソニー新規事業創出部OE事業室統括課長の藤田修二氏。藤田氏が思いついたのが"携帯"だった。「ある種のウォークマンのアナロジーです。音楽をパーソナル化できたように、香りでも同じことができないかと考えました」。

そこで、熱や水を使って香りを出す従来方式とは異なり、カートリッジにドライエアーを吹き込んでユーザーの顔周辺の空気だけに香り付けをする方式を考案した。

予想通り、アロマスティックは新しいユーザー層を開拓している。これまでアロマディフューザーのユーザーは9割以上が女性だったが、アロマスティックの購入者の約半数は男性。情報感度の高いクリエイティブ職や多忙を極めるマネジメント職、医師などの専門職に支持されている。

カートリッジは7種類を販売。これまでの一番の売れ筋は「for Business」で、仕事に集中したいときや、プレゼン前の気持ちの切り替えなどのシーンを想定した香りを調合している。

2017年9月には本体価格の値下げを実施。「今後はより幅広いユーザーに製品を手にとっていただき、気軽に香りを楽しむライフスタイルを普及させていきたい。そして、アロマスティックを香りのプラットフォームに、さまざまなパートナーがコンテンツを提供する環境を実現したいと思っています」。

海外展開も準備中で、アロマの本場の欧州やアジア、アメリカへの進出を目指す。

カートリッジは7種類を販売。イギリスの老舗アロマブランド「ニールズヤード」や国産アロマブランド「yuica」から香りの供給を受けている。

ソニー
新規事業創出部OE事業室統括課長
藤田修二 氏

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