デジタル活用を積極的に進めるサントリーは、2017年4月に「デジタルマーケティング本部」を新設。デジタルに関する全ての機能を統合し、同時に社内の人材育成にも取り組んでいる。現在の状況について、同部門を率いるサントリーコミュニケーションズの室元隆志氏に聞いた。
「デジタルマーケティング本部」の研修の方針
目的:仕事の質を高めるためのプロフェッショナル化と、アウトプットの量を増やすための業務の効率化
内容:デジタルに共通するスキルの他、SNS運用など個々の業務に応じた専門スキルなど約40テーマ。資料作成やプレゼンテーションなど、ビジネススキルの研修も盛り込んだ。
デジタルに関わる機能をひとつの組織にすべて集約
サントリーグループ全体のマーケティング・コミュニケーション業務を担う、サントリーコミュニケーションズに2017年4月、新たな部署が設立された。その部署とは「デジタルマーケティング本部」だ。これまで社内に点在していたデジタルを活用したマーケティングや企業コミュニケーションを担う組織や機能が統合され、同本部に一元化された。
同本部の部長を務める室元隆志氏は「各事業やブランドのプロモーション、オウンドアーンドのメディア運営、データベースマーケティングやシステム開発まで、デジタルに関わる機能が全て統合された組織」と説明する。具体的には事業会社に対して事業やブランドの支援、営業会社に対しては店頭・ECの支援をする他、サイト運営などのコーポレートブランディング活動も担務している。デジタルに関わるナレッジを集約し、社内のあらゆる部門で活用できる環境を整えた取り組みと言えるだろう。
こうした組織改編の背景には、2014年にサントリーホールディングスの社長に就任した新浪剛史氏のデジタル活用に対する積極的な姿勢もある。新浪氏の出身である、コンビニエンスストアなどの小売業に比べればメーカーは、顧客データを取りづらく、特にデータの活用については進化の余地がある。その進化を企画し、実現するのがデジタルマーケティング本部に課せられたミッションだ。
さらに室元氏は「現在、購買データをもとにしたマスも含めたマーケティング施策の検証方法を考えているところです。デジタルに閉じた活動だけでなく、マス広告とデジタルを融合したマーケティングプロセス、効果検証もデジタルマーケティング本部に期待される役割です」と話す。
デジタル経験のない社員を1年でプロに育てる
しかし数十名の人員が必要となる、デジタルマーケティング本部の全スタッフをプロフェッショナル人材だけで揃えるのは難しい。「4月に組織が稼働した際、3分の1程度はデジタルに関してほとんど知識のない社員。そこで今年1年は研修に力を入れてきました」と室元氏は話す …