進化・浸透するデジタルテクノロジーとの対比で、ややもすると古いイメージを持たれがちな「プリントメディア」。しかし今、欧米ではプリントメディアがデジタルマーケティングと融合し、新たな可能性を拓いている。デジタル時代に変わる、プリントメディアの今、そして日本における課題とは。
デジタル偏重のリスク 両方を制するものが勝つ
前回までは海外事例を中心に、デジタル印刷と周辺テクノロジーの進化をマーケターやブランドオーナーがどのように採用し、デジタルとリアル双方の有効性を活用しながらマーケティング活動を進化させているのかを紹介してきた。
結局のところ、生活者はデジタルとリアルの双方をそれぞれの選択の中で自由に行き来しているわけで、デジタルに偏りすぎたり、デジタルとリアルに隔たりを持たせて一貫性のない発信をすること自体がブランドにとってリスクだと考えるのは当然の流れだと思う。
国内でもデジタル印刷テクノロジーの可能性を信じ、データドリブンで新しい紙の活用にチャレンジしているブランドオーナーやサービスオーナーが多数、出てきている。
今回は当社がお手伝いさせていただいているリアルなテストケースを何件か紹介したい。当社はどちらかと言うと印刷会社(業界)のデジタルトランスフォーメーションをサポートする仕事が多かったが、ここ数年で積極的に最新の印刷テクノロジーを理解し、新しい紙の使い方を見つけようとしているデジタル領域の方々との接点が増えてきている。
特に本気で、徹底的にデジタルと向き合い、デジタルを知り尽くし、結果を出してきたプロフェッショナルであれば、あるほど紙(フィジカル)メディアへの関心が高く、オムニメディア実現を目指す動きがこの日本でも確実に動き出していると実感している。
デジタルマーケのリーダーが紙の活用に積極的に挑戦
ひとつ目は大手総合通販会社のテストケースだ。分厚い総合カタログを否定し、デジタル化宣言で紙メディアの廃止に動きだす総合通販会社も出てきている中、この会社は逆にEC/デジタルマーケティングのリーダーが積極的に紙を活用する動きを見せている。
社内にアナログ媒体で大きくビジネスを成長させたノウハウがあること、またこれからはあらゆるチャネルですべてのお客さまにとっての使いやすさを提供することが、ビジネスの競争力につながることを考えると「紙を否定することなんて一切考えない。どのメディアだろうが積極的に改善し、活用し、お客さまにとってインセンティブの高いオファーを全てのチャネルで提供するだけだ」と宣言されている。
実施したテストは、EC上でカート離脱したプロスペクトに対するメディア比較テストというシンプルなもの。カート離脱は世界的な標準で70%ととも言われており、EC事業者にとってこの改善手段を見つけ出すことは大きな課題となっている。eメールでのフォローアップが普通だが、eメールのみの改善にも限界があり、あえてここで紙をプラスし、サイトへの再誘導を促すテストを実施した ...