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NY視察研修ツアーレポート

デジタル時代、グローバルエージェンシーの優位性はどこにある?

Data Alliance、McCANN NY、OgilvyRED

1. Data Alliance
データ資産の価値を高める、WPPの「ホリゾンタリティ」戦略

世界一の規模を誇るグローバルのエージェンシーネットワーク、WPP。傘下の企業は400に上り、112カ国3000以上のオフィスで、レベニューは190億4000万ドル(約2兆円)になる。そのトップを務める英国出身の実業家、マーティン・ソレル氏は広告業界の買収王であり、近年、拡大する傘下企業を束ね「ホリゾンタリティ(水平連携)」の強化に取り組んでいる。

中でも、ビジネスゲームの鍵を握るデータアセットの集約と活用に対しては、WPP’s Data Alliance(WPPデータアライアンス)を2011年に立ち上げた。WPPが目指す「データ・ホリゾンタリティ」とは何か。その構想実現をリードし続けてきた人物である、Kantar チーフ・デジタル・オフィサー/Data Alliance 取締役のNick Nyhan氏、Kantar Japanから現在Data Allianceに出向中の中川直美氏に聞いた。

現在WPP全体では、傘下の企業が分散して収集・蓄積しているデータ、FacebookやGoogle、Amazon、SpotifyなどのWPPが提携するサードパーティ企業が保有するデータなどがあり、毎秒5万件にのぼる行動データ、1日のリーチ数である10億人のプロファイルデータ、米国2億世帯を超える購買データ、年に8000万もの生活者インタビューのデータが収集されるという。

Data AllianceはこうしたWPP全体で収集するデータを、包括的に利用するための横断的なリソース調達の専門集団である。「データは特別でセクシーなものからビジネスの基本へと変わっている。クライアントは我々に対して、複数データを統合して生活者の正しいインサイトを導き、正しいオーディエンスにピンポイントでアプローチすること、そしてデータに基づく効果測定と投資最適化をすることを求めている」(Nyhan氏)。

そのためにWPP傘下の主要企業から選抜され、世界5カ国に拠点を置くData Allianceの社員は主に「(1)WPP内外の企業とのデータ提携業務 (2)WPP内の企業横断でアクセスし利用できるツールの整備 (3)データ活用に関するグループ内リテラシーを高めるための啓発とコミュニティづくり」(中川氏)に取り組んでいるというわけだ。

Data Allianceで集約するデータは、いくつかのプラットフォームを通じて、WPP内外の企業が利活用できるように整備される。WPP内では、Wundermanなどダイレクトマーケティングに強みを持つ企業はCRMに活用する。GroupMは昨年11月に発表した[M]PLATFORMというオーディエンスターゲティングのプラットフォームを強化し、マイクロセグメントのターゲティングを実現する。Kantarでは消費者パネルを充実させる。

そして、クリエイティブエージェンシーやPRエージェンシーはWPP内の「プロジェクト70(P70)」と呼ばれるデータ検索のポータルを通じて、ピッチの前に必要なデータを取り出し、戦略立案や、クリエイティブ開発のプロセスに活用する。

「『複数ソースから、クライアントの業界ニュースや競合動向が知りたい』『消費者インサイトの仮説出しを行いたい』といったニーズに応えるために、『P70』はある。調査データや、シンクタンクが発行しているホワイトペーパー、FacebookやSpotifyといったパートナー企業のオーディエンスディスカバリーツールに1ログインでアクセスできるようにするとともに、グローバルで検索頻度の高いデータについては、拡充・整備を進めるようにしている」(中川氏) …

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