約300社の有力な広告主企業・団体が参加する、日本アドバタイザーズ協会は2016年11月、新たに「デジタルメディア委員会」を設立した。本委員会の活動を通じて見えてくる、広告主、そして広告業、メディアが知るべき課題と未来展望とは。

デジタルシフトが進む時代 「広告」に真正面から取り組む
日本アドバタイザーズ協会(以下、JAA)は、2016年11月に「デジタルメディア委員会」を設立しました。デジタル環境下においても広告活動の適正化と広告取引の透明化を促し、生活者から信頼される広告活動を実現することを目標に活動しています。設立の背景には昨今、ブランド広告主と呼ばれる、オンラインでビジネスが完結しない広告主にとってもデジタル広告の活用が欠かせないものになってきたことが挙げられます。
JAAでは1999年から20年近くに渡りWeb広告研究会(Web研)の活動を継続していますが、Web研はサイトやSNS活用などに研究の主軸があります。デジタルにおける広告というテーマにも真正面から取り組む必要が出てきたことから、新たに本委員会も発足されることになりました。
ブランド広告主は、ダイレクトビジネスを行う広告主と異なり、コンバージョン以外の認知獲得などの効果をデジタル広告に期待します。ブランドセーフティ、アドフラウドにビューアビリティなど、広告主が知るべきリスクや課題の理解もまだ十分ではない状況と考えていますので、今春には「取引適正化・透明性」、「効果の可視化」の2つのワーキングチームを立ち上げ状況の把握や、会員社に対するセミナーを実施しています。
(1)「取引適正化・透明化」
今春、欧米の大手消費財メーカーがデジタル広告の取引の不透明性を指摘し、問題が改善されるまで大幅に出稿額を削減すると発表し、日本でも話題になりました。ブランド広告主としてはブランドセーフティへの対応の他、取引の透明性という観点でアドフラウド、ビューアビリティの問題に対する、正確な状況把握が欠かせません。
(2)「効果の可視化」
JAAの会員社に話を聞いても、デジタル広告の買い付けを自社・自部門で行っているケースは3分の1程度に留まる印象です。すでにデジタルとマスの広告プランニングを統合的に考え、組み合わせて効果を上げなければならない時代に入っているにも関わらず、担当部門が分かれてしまっているのが現状でしょう。そこで「効果の可視化」ワーキングチームでは、特にデジタルとマスメディアの適切な組み合わせ、共通の効果指標づくりに取り組んでいます。
指標というと大きな話に聞こえますが、具体的にはBtoC企業の流通企業に対する棚割り交渉の際のコミュニケーションギャップ解消を目的にしています。テレビCMのGRPの量を中心とした交渉だけではデジタルシフトした環境においては、実態にそぐわない場面も出てきているからです。
広告主が正しく問題意識を持ち、協調して問題解決に取り組まないと「デジタル広告は問題がありそうなので出稿を止めよう」という議論も起きかねませんし、それは広告主にとっての機会損失になりかねません。デジタルメディア委員会では広告活動のデジタルシフトが進む中で、他の協会・団体や組織、企業の理解・協力を得ながら今日的な広告モデルを探求してきます。

デジタルメディア委員会 委員長
資生堂ジャパン コミュニケーション統括部長
小出 誠氏