ファッションを中心とした新しいライフスタイルの発信源である、フランス・パリ。パリに駐在する日本人マーケターが街中で見つけた、新しいトレンドを紹介。トレンドをマーケティングと異文化理解の2つのフレームから読み解きます。

パリに本格的な冬の訪れ
フランスは冬時間に切り替わり、長くて暗い冬が始まりました。時計の針を一時間戻したことで、夏時間に比べて日の出・日の入りが1時間早まり、突然日が短くなったような錯覚に陥ります。
夜が長いフランスですが、夜間就労が厳しく制限されているため商業施設は比較的早い時間に閉まってしまいます。そのため、帰宅後に食事にありつけない時は近所にあるMONOP(モノップ)というコンビニに駆け込んでいます。
いつもはカロリーを気にして軽食と一緒に炭酸水を購入するのですが、先日、久しぶりに「オランジーナ」を買おうと手に取った缶のデザインが印象的だったので今回は「オランジーナのパッケージデザイン」についてレポートしたいと思います。
身体感覚を活用したクリエイティブの可能性
端的に言いますと、そのパッケージデザインは「上下逆さま」になっています。もちろん意図的に、です。私も手に取ってみて、合点がいきました。
「オランジーナ」はフランス生まれのオレンジ果汁入り微炭酸飲料ですが、果肉が含まれているため、フランスでは軽く振ってから飲むことが推奨されています。デザインを上下逆さまにすることで、消費者は一度はひっくり返すでしょうから、結果的に果肉が混ざり、美味しく味わえるという仕掛けです。
微炭酸であっても「缶を振ったら、開けたときに吹きこぼれる」というのが一般通念なので、同製品が浸透しているフランスと言えど、振ることを習慣化させられず、こうしたパッケージの立案に至ったのでしょう。
本施策(「The Upside Down Can」キャンペーン)を手掛けたのはフランスの広告会社のBETC。商品パッケージ(缶のデザイン)だけでなく、CMからネット施策まで統合的に展開されています。
缶を振る行為を促した販促は以前から行われており、直近で放映されたCMでは2015年に現地で話題になった「Shake the World」(世界を揺るがす)というCMの一部が引用され、「そうだ、振らないと」と思い出したフランスの方も多いようです。その意味でも秀逸に設計された施策に見えます ...