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宣伝担当者が知っておきたいクリエイティブの基本

エモーショナル・ブランディングの成功は人々が「自分の言葉で語りたくなる」こと

三寺 雅人氏(ジオメトリー・グローバル・ジャパン )

今号のテーマ:エモーショナル・ブランディングの基本

2000年以降に急速に発展し、ここ数年で再び注目を集めている「センサリー・マーケティング」。感覚刺激で感情面に訴求することで、消費者の行動に影響を及ぼすことができると言われています。企業はブランディングにおいて、五感を刺激する「経験・体験」を通じて消費者をどのように変化させることができるのでしょうか。「左脳」(理性)だけでなく、「右脳」(感情)にアプローチするブランディングについて、現在のデジタル環境も踏まえながら解説します。

    エモーショナル・ブランディングのここがポイント!

  • 人の心理、気持ちと向き合う。
  • 人の購入までの過程を分析する。
  • メッセージと人の体験を一体化する。

ブランドと"気持ち"でつながる関係をつくる

エモーショナル・ブランディングとは、人々の心に訴えかけ、人々とブランドが中長期でつながるブランド戦略のこと。エモーショナル・ブランディングが用語として認知されるようになったのは、『エモーショナルブランディング―こころに響くブランド戦略』(マーク・ゴーベ著)が2002年に刊行された頃だと記憶しています。

いま改めてエモーショナル・ブランディングとは何か考えてみると、私たちが日頃、この言葉を口にすることはないなと気づきました。ブランドやプロダクトを世に広める施策に携わる際、当たり前のように意識しているエッセンスのようなもの、と言ってもいいでしょう。

例えば、新たな飲料発売に伴うイベントを企画・運営するとき、味や美味しさだけではなく、飲んだ人がどんな気持ちになるのか、飲んだ人に何を与えるのかを伝えることを通じ、他商品との差別化を図ります。これは私たちが日常的にしているエモーショナル・ブランディング的な考え方です。

まず考えるべきは人の心理

ブランド・アクティベーション・エージェンシーである、私たちジオメトリー・グローバル・ジャパン(以下、GGJ)は、ブランド戦略に関わり、単にクリエイティブを生み出すこと、モノを売ることがゴールではありません。イベントやSNS施策、Webを活用したキャンペーンなど、リアル・デジタル双方において、集客や購買、情報の拡散など、人々に行動してもらい、数字で結果を出すことに責任を持っています。

アクティベーション・エージェンシーと一般的なエージェンシーの大きな違いは、アド起点ではなく、アクティベーション起点で考えること。人々に行動してもらうために、最初に「人の心理」を考えること。一方的なメッセージの押しつけではなく、人々にどんなメッセージをどう伝えると、話を聞いてくれるか、興味を持ってくれるかといったことを、状況やニーズを細かく分析してから、戦略立案はスタートするのです。

人々に新鮮なインスピレーションを提供し、人々の気持ちを変えて、行動を促す。ブランドは人々に積極的かつ好意的に受け入れられ、長期的に愛されるようになる―これこそがGGJが目指す、人々とブランドとの理想的な関係性です。

コカ・コーラやナイキをはじめとするグローバルなビッグブランドがその好例でしょう。彼らは人々を「自分たちのファンにさせよう」とはしていません。人々は彼らのリアル・デジタルにおけるさまざまな取り組みを通じて、自然と彼らを好きになり、いつの間にかファンになっています。

多くの人々から愛される、成功したブランドには、「人々とブランドがどうつながると、良好な関係を中長期にわたって築くことができるのか」という考え方が根づいていると思います。ここにもエモーショナル・ブランディングが密接に関わっています。

広告、人々、デジタル環境……あらゆる変化を見逃さない

昨今、エモーショナル・ブランディングの考え方が欠かせなくなっている背景には、広告や人々のあり方が大きく変化していることがあります。かつて広告といえばテレビCMを中心とした4マス広告が一般的で、莫大な広告費を投じて出稿できる企業はほんの一握り。ただ、4マスが大きな影響力を持っていた頃は、商品やサービスの機能や特徴、要素を一方的に伝える広告を打てば響く(売上につながる)時代でもありました。

しかし、インターネットやスマートフォン、SNSなどが広く普及した今、テレビCMを打っただけで商品やサービスが売れる、とはなりません。SNS、デジタル上で人々が自分の言葉で商品やサービスについて言及しない限り、若い層には広がりづらくなっています。商品やサービスが過剰にあふれる今、それらを売ること、広げることは難しくなっていると言えます。

人々も変化しています。企業が一方的にメッセージを伝えている、明らかに広告の顔つきをしたものを見ると、彼らはそれを排除しようとするからです。「◯◯円です」「安いです」とお得感をアピールしたところで、人々は見向きもしません。ネット上に膨大な情報が存在する今、わざわざ広告を見なくても、自ら情報を取りに行き、決断できるようになっています。

人々が、エモーショナル・ベネフィット、つまり商品やサービスを通じて元気になったり幸せになったりするのだと、自らの頭と心で受け止めて初めて、感覚的に好きになる。そして、やがて長期にわたってブランドを愛するようになり、ファンになる。そんな流れが生まれているのです。

このような大きな変化を踏まえ、オムニチャネル時代の今、ブランドが人々から長く愛されるものになるよう、GGJは「レオナルド」というプロセスを大切にしています。人々を観察し、彼らが購入決定に至る過程(Purchase Decision Journey)の中で、彼らの行動を決定づける核心的な瞬間(ピヴォタル・モーメント)を特定した上で、行動を変え、形づくることで、より質の高い購買体験を促します。

ピヴォタル・モーメントを理解した上で、人々を動かすシンプルで強いメッセージ、エモーションに訴えかけるメッセージ(ピヴォタル・アイディア)を開発しています ...

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