2020年の東京五輪に向け、スポーツに対する社会的関心が高まりつつある。スポーツ産業以外の企業が、その価値を生かすこともできるのか。6回の連載を通してスポーツを生かす6つの視点を解説していく。
生まれる前から始まる潜在意識としての欲求
人はいつからスポーツに関わり始めるのだろう。生まれた時、あるいは生まれる前から、人はスポーツや運動に携わっているとは言えないだろうか。母親のお腹の中にいる時から活発にまたは楽しく運動をしている様子を想像することができる。母親が日常動いている何気ないテキパキとした動きやマタニティヨガ、水泳などをお腹の中で自然と感じ取り、教えられなくとも自発的にできるようになるのだろうか。
運動やスポーツを日常生活の中心に置くかどうかは、各個人それぞれだろうが、幼少期までのこの運動への無意識のコンタクトが多くの人々の心身に自然に忘れられないものとして残っている。だからこそ年を重ねるごとに、様々な記憶や思い出と共に運動やスポーツをする(DO)ことへの意識が高まってくるのだと思う。
それは単に健康や体型維持のためだけではなく、潜在意識としてのスポーツ欲求ではなかろうか。DOをしない人でも観戦や応援する率は直接的なり間接的なりで増加していると思う。
スポーツの観戦、応援の対象はアスリートだけではない。保育園や幼稚園そして小中学校における、運動会も実はスポーツ市場でビジネスをしていると、非常に重要なイベントであることが分かる。
学校行事の中でも特に大きい運動会は主役である子供たちはもちろん、親や祖父母をはじめとする親族の興奮度合いといったら表現のしようがない。子供たちの頑張っている姿や一生懸命に演技をする姿を目に焼き付けることが第一の目的ではあるが、自分自身の幼少時代を思い出し、自身への活力や前向きな意識付けをしていることもあるだろう。
観る(WATCH)、感じる(FEEL)を通じて、スポーツや運動をする(DO)に自然移動する瞬間である。このことは2002年日韓W杯や2020年東京オリンピック・パラリンピック開催が自国日本に決まった時に、多くの人々が心を動かされ自発的にサッカー・フットサルやジョギングをはじめ様々なスポーツをするようになったことと類似する現象だ。
スポーツだけではないだろうが、(DO)という活動を起こす・起こさせる前には、必ず意識の変化やきっかけをもたらすシンプルな理由や事柄がある。私も東京でのオリンピック・パラリンピック開催が早朝に決定した時、絶叫と感動と興奮で号泣をした後、勝手に心身が欲望を抑えきれずに外へ走り出した思い出がある。昨今は少々弛んでいる自身がいることは反省であるが。
老若男女が楽しむ 運動会という一大イベント
話を運動会に戻そう。
子供たちにとって運動会は年に一度のビッグトーナメントであり、準備段階から張り切っている姿を想像することで大人たちも笑顔になれる。そして運動会は子供たち以外の周囲にとっても一大イベントなのである ...