ビジネスを順調に伸ばしている企業には、社員の働き方や体調管理、成長をサポートする仕組みが整えられている。制作会社の揚羽の取り組みを紹介する。
東京・八丁堀にある広告・制作会社の揚羽は、2001年に湊剛宏氏が設立した会社だ。大手からベンチャーまで、さまざまな企業の映像からグラフィック、Webサイトの制作を担ってきた。一般的に制作会社はハードな労働環境で社員の離職率が高いことで知られているが、揚羽では社員の労働環境を改善するための制度を複数導入することで、長く働く人が多いという。どこに秘訣があるのかー。
広告会社経由の仕事は1割弱 脱・下請け構造をめざす
もともと湊氏が創業したきっかけは、映像制作業界の下請け構造や、制作会社の原価意識の低さに対して、問題意識を持ったことだった。大学を卒業後、湊氏はリクルートに入社。営業担当として活躍していたが、ドキュメンタリー監督になるという夢を諦めきれず、30歳で小さな映像制作会社に転職した。しかし生活や労働環境は、急激に悪化することに。年収はリクルート時代の5分の1以下、さらに土日も働き平日も徹夜の連続で、気が付いたら保険もない状態だった。
「今で言うブラック企業かもしれません。給与は成果を出して、すぐに上げてやると思っていましたが、さすがに結婚して家族もいたので、1年ほど働いていると生活が苦しくなってきました。ちょうど第2子が生まれ、働いていた妻の給与が減ると、手取り15万円では光熱費さえ払えず貯金を切り崩していました」。
そうした状況から、生活していくために自ら、企業の映像制作業務を請け負う会社をつくり独立。また、制作会社でありながらも、在籍していた会社とは違い、社員がしっかり生活できる収入を得られて、子どもと遊ぶ時間もとれる会社をつくると誓った。その思いを込めた社名を検討したときに、湊氏の頭に浮かんできたのが「揚羽」という社名だった。
「時代の変革者であった織田信長が若い頃に、いつか天下を獲ると想いを込めて家紋に採用したのが"揚羽蝶"だったと聞きました。制作業界の既成概念に一石を投じたいという思いを込めています」。
創業から16年が経ち、社員は100人を超えた。2017年は、新卒社員が16人入社するなど、ビジネスも順調に拡大している。その成長を支えたポイントやユニークな制度を紹介する ...