2020年の東京五輪に向け、スポーツに対する社会的関心が高まりつつある。スポーツ産業以外の企業が、その価値を生かすこともできるのか。6回の連載を通してスポーツを生かす6つの視点を解説していく。
シニアと女性の参加が拡大 スポーツ市場のこれから
幼少期における運動やスポーツとの無意識のコンタクトが年齢を多く重ねる毎に記憶のひとつとして蘇り、身体を動かすことをもう一度するようになるのは人間の性なのだろうか。健康維持・増進、美容や肥満防止のために運動やスポーツを始める大人たちは多い。特にこの10数年、健康や美容に関するメディア情報が運動の大切さや効果をうたっているので、よりその傾向は強くなっている。運動やスポーツをすることで、良いことはあっても悪いことはないのだろう。
経済産業省のレポートによれば、平成15年から24年の10年間でフィットネスクラブ会員数は30代以下の会員比率は低下しているが、60歳以上の会員比率は増加しているというデータもある(経済産業省産業活動分析:平成24年年間回顧)。特にシニア層の運動・スポーツへの参加は今後も拡大が予測される。
それでは、健康や美容の運動との関わりから来るスポーツビジネスにはどのようなものがあるだろうか。スポーツウエア、シューズ、小物の企画・開発を主導するメーカーや販売するスポーツショップは、その際たるものであろう。各メーカーやブランドはランニング、ウォーキング、水泳などの基礎運動の有用性をうたい、その際により効果が発揮できる高機能性や着心地のよい商品展開をしている。
さらにメーカー主導で、ユーザーを対象とした大会への協賛や参加型トレーニングイベントの企画も実施して、スポーツの重要性や楽しさを伝えている。商品に関して言えば、画一された形やベーシックなカラーのみの展開ではなく、人々の趣向や感性に合わせるように各種フィット感の異なるタイプがあり、色彩も豊かになりデザイン性も高いものが主流となってきた。まだまだ違いはあるが、趣向に年代の差がなくなってきたのは間違いない。
50代や60代の方々に、10数年以上前の感覚で商品提供を行い、情報を与えれば反発を買うのは確実であろう。いまは多重情報の時代であり、年代に捉われることなく様々な情報を得ることができる。20代であっても60代であっても同じ情報が同時にあらゆる手法で簡単に手に入るのだから、年齢だけで趣向や感性を区切ってしまうのは正しくない。
もちろん過ごしてきた年月の長短は人々の心や感覚に強い影響を与えてきている。また育ってきた環境・文化によって受け入れ方も異なるのは当然である。しかしながら現代は完全に情報透明化の時代である。お洒落で美しく格好いい老紳士や貴婦人が増えているのは必然と言えよう。スポーツ場面においてもお洒落アスリートやユーザーが激増している ...