シニア世代に向けたプロモーションが活況なのは米国も同じ。シニア世代の関心を集めるために、同世代のシニアモデルを起用した広告が数多く制作されている。米国の最新のシニアマーケティングについて、米国・東海岸を中心にマーケティング支援を行っている松本泰輔氏が紹介する。
シニアのスマホ利用率 過去5年で4倍に増加
米国・国勢調査では65歳以上の人口は、2050年までに全体の20.7%(2000年・12.4%)を占めると予測している。つまり米国では5人に1人がシニア年齢層となり、日本ほどではないが、高齢化が進んでいく。数年前まで最多世代だったベビーブーマー(53~71歳)は、現在もミレニアル(20~36歳)に次いで2番目に人口が多い。彼らがリタイヤし始めて約5年になるが、これまでの高齢者のイメージとは異なる「アクティブなシニア」に企業の注目が集まっている。
これまで定説とされていた「『シニアはハイテクやインターネットに疎い』という認識は大きな誤解」という調査結果が、昨年Pew Research Centerから発表された。同調査によると、65歳以上のインターネット利用率は2000年の12%から2016年に67%に上昇し、スマートフォン利用率は2016年は42%と、5年間で約4倍になっている。
またデジタルマーケティング会社のDMN3が今年60~69歳1000人に対して行ったアンケートでは「少なくとも1回以上フェイスブックを使ったことがあるシニア」は82.3%、「フェイスブックを週11時間使っている人」も15.5%いる。世間の思い込みとは逆に「シニアはスマホやタブレットを操り、インターネットやSNSを積極的に活用する世代」であることが分かってきた。
(1)Tモバイル:55歳以上限定、データ通信無制限
シニアのスマホ利用者が増えているというデータから生まれた新サービスもある。格安プランとクールな広告で若者に人気のTモバイルは、55歳以上データ通信無制限プラン「Unlimited 55(2回線月額60ドル)」を8月に発売した。
同社のデータ無制限プランは1回線で60ドルなので、通常の半額になる。自ら広告塔として過激な意見を拡散する名物CEOのジョン・レジャー氏はYouTubeで「ワイヤレス業界はシニア消費者を馬鹿にしたプランばかり。AT&Tのシニア向けプランは『データ通信』などが含まれていない。ベビーブーマーたちはスマホを操り、FacebookやTwitterを楽しんでいるというのに。もっと彼らをリスペクトするプランを提供すべきだ」と息巻く。
同ビデオでは「SNS?スマホ?そんなの皆さんに必要ないでしょう」というAT&TのパロディCMを紹介し、いかに的外れなマーケティング施策であるかを力説する。最後にレジャー氏は「スマホを操る現代のシニアの皆さん、ぜひTモバイルへ」と熱く勧誘する ...