2020年の東京五輪に向け、スポーツに対する社会的関心が高まりつつある。スポーツ産業以外の企業が、その価値を生かすこともできるのか。6回の連載を通してスポーツを生かす6つの視点を解説していく。

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なぜスポーツ業界の広告は出稿量以上に注目されるのか?
連載1回目では人の心を動かし、人と人との繋がりを促進するスポーツの持つ特性について説明した。今回はスポーツが持つ圧倒的なまでの影響力について、いくつかの角度から考えたいと思う。
ひとつ目が人の興味、関心を惹きつける力だ。私は、これまで長きにわたりスポーツ業界で仕事をしてきたが、マーケターとして従事するブランド価値向上のための活動、商品の企画開発、販促活動、そして契約チームや選手と協働で行うイベントなどの活動において、自分たちの想像を超越するスポーツの影響力を感じさせられる場面にたびたび遭遇してきた。
だからこそスポーツ業界では各ブランドや流通企業が自分たちの狙いに基づいてマーケティング戦略を立案・実行しながらも、結果的に多くの企業がスポーツの持つ楽しさ、健康・美容への影響といった根源的な価値の訴求になっているのだろう。それは各企業のブランドの魅力を伝えるより、スポーツ自体の魅力を謳った方が、スポーツ愛好家やファンには魅力的だからだ。
そこでスポーツ業界の広告を思い返してもらうと納得してもらえると思うが、実はこの業界では、ブランド価値向上やユーザーの購買意欲の助長を目的とするテレビCMの出稿量は、通信や金融や食料業のそれらと比較しても非常に少ない。
広告市場全体から考えれば、スポーツ業界の広告費は決して多いとは言えない。それは1回目の原稿で触れたように、スポーツ市場自体の売上が大きいとは言えない規模感だからだ。それでも世界の広告賞を見ても、スポーツ業界の広告が表彰されたり、話題になることは多い。これも出稿量という定量的な数値では測れない、スポーツが持つ影響力があるからではないだろうか。業界や企業が意図的に露出を図らなくても恒常的な露出があり、また人々の心の中に必然的にスポーツに対するマインドがあるのだろう。
人の心を前向きにし経済効果を生み出す
2つ目が経済に与える力だ。各種の報道で「経済効果」という言葉が良く使われるが、これもスポーツから発祥するケースが多い。オリンピック/パラリンピックやサッカーW杯などの世界的スポーツイベント開催によって、運営施設の建築・ホテル事業・交通機関や関連商品物販をはじめ、多種多様なビジネスが盛り上がる。2020年東京五輪における経済効果は◯兆円や◯◯◯◯億円などと様々な額が言われているが、実際はいくらになるのか想像ができない ...