決済履歴に応じて適切なオファーを実現
日本でも近年、スタートアップ企業の躍進が目立つFinTech領域。まだFinTechという言葉も登場していなかった2011年に起業したカンムの代表取締役社長 八巻渉氏は「"金融×データ解析"というテーマに可能性を感じて起業したが、当時はFinTechもビッグデータという言葉もなかった」と振り返る。
カンムは2013年に日本で初めて「CLO(Card Linked Offer)」事業を立ち上げた会社。同年の6月よりクレディセゾンと提携し、カード決済連動型サービス「セゾンCLO」の提供を開始している。
「セゾンCLO」では年齢、性別、住所、カード利用履歴などの会員情報に基づき、クレディセゾン加盟店の優待情報をWeb明細画面に配信。その後、キャンペーンに参加をした加盟店より決済額に応じて成果報酬型で送客手数料を受け取るモデルを採っている。
「幼稚園時代から、プログラミングに親しんでいた」と言うほど、テクノロジーやデータに強い興味を持っていた八巻氏。大学卒業後は組織に所属しデータ解析のエンジニアとして勤めていたが、3年ほど経過した時に起業を決意。
「大学の頃から、スタートアップの投資家の人たちと交流があり、自分の専門性を生かして社会に貢献できる起業領域がないか、と考えていた。データを使って日本の発展に貢献できることとして、金融領域での活用を考えた」と話す。
会社設立当時は個人投資家向けの情報提供サービスの立ち上げも検討したが、規制の多い業界ゆえのマネタイズの難しさに直面。その時に知り合いだった佐俣奈緒子氏がコイニーを立ち上げると聞き、立ち上げに参画。決済に関する知識を得ることになった。決済に関わる知識を得る中で知ったのが「CLO」だった。
「設立当初に考えていたサービスは個人投資家向けだったが、本当に経済にインパクトを与えられるのは、日常のお金の使い方を変えることにあるのではないかと考え、CLOに着目した。データ解析という得意分野を生かせることもサービス開発を目指した理由」と八巻氏は話す。
その後、クレジットカード会社に企画を持ち込み、そこで意気投合したのがクレディセゾンだった。交渉開始から2カ月で合意に至り、その2カ月後の2013年の6月には「セゾンCLO」のリリースにこぎつけた。
「O2Oの概念が注目され始めた時期だったのでCLOについては理解されやすかったと思う ...