江崎グリコ「アイスの実、江口愛実登場」や「ポッキー、デビルニノ」を手掛けたクリエーティブディレクターの中尾孝年氏と、ファッション雑誌『ViVi』の専属モデルを始め、映画にも多数出演される玉城ティナさん。デジタル時代における二人の広告の仕事に対する考えを聞きます。
足立:中尾さんは大阪から東京に籍を移されて半年とのことですが、東京にいらっしゃるまでの生活や仕事についてお伺いできますか。
中尾:そうですね、今はタレントさんを巻き込みながら話題をつくるクリエーターだと思われがちなのですが、東京に来る前は関西で9年、その前は中部に8年いて、ローカルの仕事を多くやっていました。予算も少なく、タレントさんをキャスティングできない企画が多かった。そのため自分の言葉で勝負してきました。
中部で経験を積むうち、東京へ転勤の話もあったのですが、関西のクリエーティブに興味があったので、希望して異動しました。独特な文化の中でクリエーターが個性の塊のように働く現場でしたね。
足立:そうでしたか。どうして東京へ?
中尾:「オンリーワン」になるには、地域の広告業界で頑張るのはすごく良いことだと思うのですが、「ナンバーワン」になるには、東京のほうが良いかなと。
足立:実際に東京に来ていかがですか。
中尾:人と人が繋がりやすいなと。僕の友だちがまた違う人と友だちだったりする。輪が広がるのが速いですね。あとは地域にも優秀な人はたくさんいますが、やはり東京には才能のある人が多く集まっていますよね。
足立:密度が高いですよね。
中尾:そうなんですよ。密度が高いからこそ繋がるスピードも速い。ネットの影響もあって、企画実現までの時間も、情報やエンタテインメントが消費されるまでの時間も圧倒的に短い。今、何かを仕掛けながらも常に次の企画の準備に動き始めないといけませんし、だからこそ化学反応が次々と起きているのを感じています。
足立:中尾さんはタレントさんの起用や、巻き込み方がうまいと思うのですが、起用の際に心がけていることは?
中尾:その人の持っている魅力を突き詰めるのは最も難しいのですが、一度その人の持つ魅力を究極まで考えて表現を思い描いてから、もっとすごい魅力を出すにはどうしたら良いのかなと考えるのが僕の手法ですね ...