機械による補完で 記者は深堀り記事に注力
囲碁や将棋でトップ棋士を打ち負かし、自動運転の実用化に向け開発が進む─。人工知能(AI)のニュースを目にしない日はない。新聞各社でも決算記事作成や校正の自動化など、取材・編集支援技術の開発が進んでいる。定型的な記事の執筆や編集作業を効率化することによって、独自取材や分析・解説といった「人間でしかできない」仕事に人的資源を集中させることを狙う。
AIを活用した記事の自動執筆は米AP通信社が2014年から取り組んでいる。すでに決算や野球のマイナーリーグの記録の執筆を機械が担当。米ワシントン・ポストが、昨年のリオデジャネイロ五輪報道で活用したことで話題を呼んだ。
日本でも昨年から、記事の自動生成の事例が出てきた。中部経済新聞社は2016年11月1日、創刊70周年特集としてAI記事を掲載。過去の記事から数万本の文章をコンピューターに学習させ、創刊時のエピソードから現在に至るまでの道のりなどを書かせた。西日本新聞社は今年1月、AP通信も導入するシステム「ワードスミス」を活用して、天気予報を自動執筆させた記事を載せた。
特集記事での利用が相次ぐ中、満を持して登場したのが日本経済新聞社の「決算サマリー」だ。1月25日に始まったこのサービスは、企業の決算資料の要点を自動で文章化し、日経電子版と「日経テレコン」に掲載するというもの。現在、全上場企業3600社が対象。決算発表がピークを迎えた5月12日には、993本の記事を配信した。
これまで手が回らなかった多くの企業の決算記事をフォローするとともに、いち早く情報を出していく。このことに加えて、記者が付加価値の高い仕事をすることが狙いだ ...