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私の広告観

落語は暢気で気持ちいい芸能 構えずに自然体の言葉こそ伝わる

春風亭一之輔

『同じ噺(はなし)も演者が違えば、味付けが変わる』。これは若手屈指の実力派として会場を沸かせる人気噺家・春風亭一之輔さん(39歳)を体現する言葉だ。江戸時代から語り継がれた古典落語を明快なテンポと場の空気を読み、自分の解釈を加えてわかりやすく話す芸風が人気を集める。春風亭一之輔さんの落語への向き合い方、広告への考えを聞いた。

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)さん
1978年千葉県野田市生まれ。2001年、日本大学芸術学部卒業後に春風亭一朝に入門。前座名は「朝左久」。2004年に二ツ目となり「一之輔」を名乗る。NHK新人演芸大賞、文化庁芸術祭新人賞などを受賞。2012年、21人抜きで寄席で最後に出る「真打」に昇進。2012年、2013年に連続して国立演芸場花形演芸大賞を受賞。寄席を中心に全国でも幅広く活動する。週刊朝日にてコラム「ああ、それ私よく知ってます。」、毎日新聞 朝刊にて「一之輔の『ぶらっと落語歩き』」を連載執筆中、JFN系列「SUNDAY FLICKERS」(毎週日曜 6:00-7:30、JFN系列全国FM局でオンエア)など、メディアでも活躍している。

20~30代のファンが増加 平成落語ブーム到来

昨今、「平成落語」ブームが湧き上がっているという。首都圏で開かれる落語会は月間1000件以上を数え、10年前の約10倍。カフェでの出張落語会まで登場し、深夜寄席も行列ができる人気ぶりだ。その中心は、20~30代が急増中というから意外である。デジタルネイティブの若者が今、寄席のライブ感に惹かれるのはなぜなのだろうか。

「僕が初めて浅草演芸ホールに足を運んだのは高校生の頃。当時は同世代の人はあまりいなかった。だから良かったんですよね。周りの同級生が知らないものを見つけたという喜び。そして僕はこんな所で笑っていていいのかなという背徳感が入り交じったような変な感覚を覚えました。落語ってちょっぴり大人の世界じゃないですか。良いものを見せてもらったぞという高揚感がありましたね」。

こう話すのは、若者の人気を集める噺家の春風亭一之輔さんだ。入門して10年でNHK新人演芸大賞と文化庁演芸祭大衆芸能部門新人賞を同時受賞。2012年には異例の21人抜きの大抜擢で真打に昇進した。ラジオはもとよりテレビ地上波やBSにレギュラー番組を持ち、ユニクロの「ヒートテック」CMにも起用される有名人だ。

一之輔さんが落語の道に進んだのは、大学卒業後すぐ。日大の芸術学部では落語研究会に所属し、大学祭や落研の発表会ではすでに40席の噺を持つほど「落語が肌に合っている」という。その理由は?

「初めて寄席を見た時から、会場の雰囲気とプログラムのシステムが非常にいいなと思いましたね。15分くらいの持ち時間でいろいろな人が出て、昼・夜の部を合わせると40組くらいの演者が出演する。20代くらいの若い噺家もいれば、年配の世代もいて、熱演もあればサラッと自然な感じもあり、出番が済めばすぐに帰る人もいる。プログラムの構成は漫才もあれば色物さんといって紙切り(紙を鋏で切り、形を作る伝統芸能)などもあって、そのうちお客さんのテンションがだんだんと盛り上がっていくんですよね。そして最後に一番盛り上がっている状況で幕が閉まる。気持ちいい大衆芸能です」。

一之輔さん曰く、寄席にはフェスとは対極の「のんきに楽しめる心地よさがある」と話す。「熱演の噺家ばかりだと観る側も疲れちゃうんですよ。合間の息抜きではないですが、ホッとさせる噺家や色物さんにも、ちゃんと役割があるんです。個人芸のようでありながら、団体芸でもって笑い、癒やしてもらっている。噺家は15分集中して自分の仕事をし、頭を下げてサッと帰っていくのを見て、格好いい生き方だなと憧れましたね」という一之輔さん。

大学時代は放送学科でテレビや広告CMを専攻し、放送作家やラジオのディレクターの道を考えた時期もあったそうだ。高校で出会った落語の道に進んだことは、出会うべくして出会った天職では――。

「どうでしょう。高校で入っていたラグビー部が辛くて辞めた後、退屈しのぎに浅草を訪れ、なにげなく寄席に立ち寄っただけです。たぶん部活を辞めていなければ噺家にはなっていなかったですね ...

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