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私の広告観

さまざまな文化や宗教観をミックスする、「和」という方法を原則にした共生の在り方―現代アーティスト・小松美羽

小松美羽

神様の使いとされる神獣の自由闊達な姿ほか、「生死観」をテーマにした独特の画風で脚光を浴びる気鋭の現代アーティスト・小松美羽さん。2014年には出雲大社に絵画「新・風土記」を奉納。その翌年には「天地の守護獣」と題した有田焼の狛犬たちが大英博物館で所蔵展示されるなど、希有な才能が開花する。小松さんの創作活動、さらにその作品に込めたコミュニケーションに対する考えとは。

小松美羽(こまつ・みわ)さん
現代アーティスト。1984年生まれ、長野県坂城町出身。女子美術大学短期大学部を卒業。2009年に「美しすぎる銅版画家」としてメディアに取り上げられ注目を集める。2015年、英国王立園芸協会主催(総裁はエリザベス女王)の世界最大のガーデニングイベント「チェルシーフラワーショー」にガーデナー石原和幸氏とコラボしてエントリー、7度目のゴールドメダルを獲得した。この狛犬が大英博物館の所蔵となり日本館に展示されている。現在は「大和力を世界へ」をテーマに精力的に海外に作品を発表し、世界を見据える日本を代表するアーティストとして活躍する。6/3(土)~6/11(日)に紀尾井カンファレンス(東京ガーデンテラス紀尾井町)にて今年度国内唯一の大規模個展【小松美羽展 神獣~エリア21~】開催。

幼い頃に育まれた「死生観」 死は生きものを平等にする

2017年春、ソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia」のテレビCMに出演し、話題を集めたのは世界を舞台に活動する現代アーティストの小松美羽さんだ。大型サイズのキャンバスにダイナミックに表現するのは、神の化身にも見える不思議な生きものたち。その迫力や一度見たら払拭できないほどの存在感、創作の源流はどこにあるのだろうか。

「小さい頃は、人よりも動物や植物に興味があるような子どもでした。両親が動物好きだったのでウサギやインコ、蚕、モモンガ、ハムスター、カタツムリ…と数え切れないほどの生きものを飼っていました。3人兄弟みんな絵が好きだったので、コミュニケーションツールとして絵が一番身近なところにありました」と小松さん。生きものと暮らすということは、必然として生死とも向き合う。

「日々新しい命が産まれて、死んで…の連続でした。ある日、可愛がっていた『ラビちゃん』というウサギが死んでしまった時に、魂がフッと浮かび上がるのが見えた気がしたんです。抱っこして『生きろ!頑張れ!』とさすっている時に、私の気持ちが伝わったのでしょうね。きっと魂はここにあるよと、死に際を見せてくれたのではないかと思います」。そうして育まれた彼女特有の柔らかな感性。小松さんは祖父の臨終でも大切なことを教わったという。

「私は具合が悪かった祖父の死がすぐそこまで迫っていることも不思議と予感できました。その頃はすでに上京していたのですが、祖父の容体を耳にし、そろそろ覚悟せねばと帰省したその晩から朝方にかけて、祖父の目がラビちゃんと同じような目に変わり、魂がフッと軽くなって抜けていったのを見た気がしました。この時も祖父の尊い死に際を目に焼き付けることができました」。

小松さんはこうも続ける。「死とは悲しい出来事ではありますが、肉体から逸脱してやっと平等になれたというか、良い世界へと到達できたんだなと。私は本当の平和というのは、生きものが亡くなったその先にあるんじゃないかと思っているんですね。全てのものに魂はあり、神さまがつくってくれたのだから、死を迎えれば平等になれる。だから私は妖精なども含めて生きものは全て好きだし、昆虫が気持ち悪いとか、犬は好きだけど猫は嫌いだ、という考え方はどうしても分からないのです」。

神話の国から人生の転換期が始まる

小松さんが画家を目指し、銅版画を描くようになったのはいつ頃からなのだろうか。「幼少期から漠然と画家になると決めていました。版画との出会いは東京の美大へ入ってからです」。

小松さんによると、昔から描きたい線などの絵の表現があったそうだが、それらをどう表現して良いのか、当時は分からなかったという ...

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