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IoTとマーケティング

クリエイターにとってIoTとは:キーワードは「体験デザイン」「ビジネス」「テクノロジーへの理解」

望月重太朗(博報堂アイ・スタジオ)×富永勇亮(dot by dot inc.)×梅田亮(ワン・トゥー・テン・ドライブ)

IoTをコミュニケーションに活用したいと考える企業は、今後ますます増えていくと思われます。しかしそこでは、消費者の日常生活に馴染むUI、生活動線を阻害しないUX、またIoTを通じて取得できるさまざまなデータの活用など、これまでにない多角的な視点が必要になります。デジタルテクノロジーを活用したコミュニケーションを多く手掛けているクリエイター3人が考える、「IoT時代のコミュニケーション」とは。

(左から)
博報堂アイ・スタジオ クリエイティブディレクター 望月 重太朗氏
dot by dot. inc Planner/CEO 富永 勇亮氏
ワン・トゥー・テン・ドライブ 代表取締役社長 梅田 亮氏

開発過程で得られた知見に価値

―IoTプロジェクトとの関わりについて聞かせてください。

望月:プロダクトとして完成するまで、とにかくプロトタイプをつくり、改善を重ね続けます。雑草魂ですね(笑)。その過程でテストマーケティングを行ったり、生み出した技術・ナレッジをアレンジして別の企画に生かすことも少なくありません。何をつくるか、選択肢は無限にありますが、「インサイト起点」で考えるという軸からはブレないよう意識しています。インサイトを見つけて、そこにどんなUX(ユーザーエクスペリエンス)を付加していくかという発想です。

Webを含めて既存メディア向けのコンテンツはフォーマット化されていて安心感がありますが、IoTプロダクトは概して見慣れない、"謎"の存在になりがち。だからこそ、インサイトに寄り添うことが大事だと思うんです。目的がわかりやすいもの、挙動がシンプルなものなど、ユーザーが取っつきやすいよう、意識的にハードルを下げるようにしています。

富永:dot by dotは、IoTを中心に置いて活動しているわけではなく、広告コンテンツやミュージックビデオ、テレビ番組やインスタレーションなどの企画制作に携わる中で、必要に応じてIoTプロダクトもつくっている、という感覚です。一つIoTプロダクトをつくると、そこからの派生でさまざまなものをつくることができると実感しています。

例えば、今日持ってきた「Lyric speaker」は、さまざまな楽曲の曲調・構成を解析し、歌詞に最適なフォントを当て込んでモーショングラフィックスを生成するエンジンが組み込まれています。スピーカーという製品の特性上、ハードに目が行きがちなのですが、実はソフトウェアとサーバーサイド技術が核。このシステムを用いて、さまざまなアーティストのコンサートの演出に活用しました。

望月:今、ぬいぐるみを喋らせるボタンデバイス「Pechat」を、さまざまなテクノロジーでアップデートしていくことを進めているのですが、その過程では、プロトタイピングを繰り返しながら改善を重ねています。そのリサーチでの気づきは、別の企画にも生かせると思います。

IoTプロジェクトは、やればやるだけ実りがあるのは事実ですし、IoTによって広がるビジネスチャンスを得るためには、積極的に取り組むべきだとも思います。ただ、「迂闊に手を出すべきではない」とも強く思うんです。

これは、実際に踏み込んでみて初めて分かったことなのですが、僕らがメーカー的な立ち回りをしようとすると、圧倒的に知見が足りないんです。知財の権利保護や品質保証など、メーカーが長い歴史の中で蓄積してきた知識が僕らにはない。ものづくりができる企業と連携し、僕らは得意領域であるソフトウェアとハードウェアをマッチングする役割を担う。そのスタンスを明確にすることが大切だと感じています。

梅田:1→10 driveは「ブランド・プロトタイピング・カンパニー」を標榜しています。新しいものを生み出す上でプロトタイピングを行うことは、自社開発案件でもクライアントワークでも、もはや欠かせない要素になってきていると感じます。そんな状況下、プロトタイピングの効率・スピードを向上する目的で、IoT開発を高速化するアプリ「ZIG Simulator」を提供しています。

IoTプロトタイピングは、Webや通信、ハードウェアと、必要な技術が多岐にわたるためハードルが高い。そこで、すべてを1からつくるのではなく、通信とハードウェアはスマートフォンで済ませてしまおうという発想です。アイデアがあったら、まずは形にしてみて、どんどん体験を共通していきたい。そのための環境づくりも合わせて取り組んでいます。プロトタイプを発表すると、社内外から引き合いがあります。

プロトタイプをベースにさまざまなニーズや要望を聞き、それを参考にしながら完成を目指していけたらと考えています。体験を共有できるプロダクトがあるだけで、関係者からの意見は各段に出やすくなります。それは結果的に、いいものをつくることにつながると思います。

ビジネスの上流に関わることが増えた

―IoTがクリエイティブの現場に入ってきたことで、変化はありましたか。

富永:これまで、誰かがつくったモノを広告する立場だったわけですが、ものづくりやサービス開発という、ビジネスの最上流のフェーズに関わらせてもらえるようになったことは大きな変化ですし、チャンスだとも思っています。とは言え、先ほど望月さんがおっしゃったように、迂闊に手を出すとリスクもあるというのは間違いありません。

梅田:そこでは、テクノロジーについて聞ける人が隣りにいる環境をいかにつくるかが大事だなと思います。クリエイターのパートナーとなってくれる、テクノロジーの専門家の存在は重要だと感じます。

IoTが実務の現場に入ってきたことで、一つ懸念しているのがクライアント企業の方々の「IoT」の捉え方・向き合い方です。「IoTを活用してコミュニケーションしよう」「IoTプロダクトをつくろう」と、ゼロから何かを生み出すことを考えるより、「自社の既存資産をIoT化する」ことのほうが現実的ですし、その企業が取り組む意義のあるプロジェクトになると思います ...

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