事故が起こらない限り、顧客との接点を持ちにくい。これは自動車保険という商材の特徴であり、大きな課題でもある。セゾン自動車火災保険が提供する「おとなの自動車保険」のようなダイレクト型であれば、なおさらだ。代理店型は営業担当者が顧客との継続的な接点として機能するが、ダイレクト型にはそれがない。
顧客との日常的な接点を持ち、ブランドエンゲージメントを強化したい。また、顧客にとってより便利で価値のある保険を目指したい。こうした考えの下、セゾン自動車火災保険が7月にスタートする新サービスが「つながるボタン」「つながるアプリ」だ。
機能は大きく2つ、(1)事故連絡・対応サポート、(2)ドライブレポート(走行技術測定、走行マップ表示)を備える。車内に設置したボタンとスマートフォンアプリが自動的に連携し、もしもの時には事故連絡から事故対応までの一連のサポートを、これまで以上に円滑に進めることができる。7月以降、希望するすべての新規加入者・継続契約者を対象に、ボタンとアプリからなるIoTキットを配布する。
顧客行動の実態の把握から始めた
同サービスの構想がスタートしたのは3年前、2014年の夏。世界的デザインファームと連携して顧客行動調査によるインサイトの深堀りを行い、保険のあるべき姿・提供すべき価値や、顧客の真のニーズを徹底的に調べ上げることから始めた。北は北海道から南は山口県まで計十数名のドライバーのもとを訪れ、車に同乗しながら、事故や、その際に受けられる保険サービスを疑似体験してもらう──これを通じて、事故発生時の顧客の心理状況や、保険サービスの内容認知・理解などの実態に迫ったという。
「保険は目に見えない商品なので、お客さまからどう捉えられているかが見えづらい。そこで、改めてインサイトを深く理解しようと考えたのです。その結果、『万が一のとき、保険会社は何をしてくれるのかよくわからない』という声が予想以上に多かった。また、『加入することで運転スキルが向上したり、事故が減るような保険があったら嬉しい』といった、"+α"を望んでいることがわかりました」と袴田法明氏・綿貫辰耶氏は話す。
自動車保険に対するネガティブな印象を払拭するとともに、保険会社として提供できる新たな価値を生み出す...