IoTの普及によって、取得できる消費者のデータの量・種類は格段に増加します。当然、企業がマーケティング目的で活用できるデータの量・種類も増え、今まで以上にできることが増えていくでしょう。IoT時代のユーザーデータ活用について、可能性の大きさと注意すべきポイントを解説します。
生活者はスマートフォンを使って情報収集したり、動画を見たり、商品やサービスを購入したりと、マーケティングには欠かせないペルソナ作成や効果測定の材料となるさまざまな行動を画面内で行っている。これらの情報は、すでにWebデータとしてマーケティングに使われているが、スマートフォンが持つポテンシャルはそれだけではない。生活者が毎日持ち歩いているこの端末は、画面の中以上に、画面の外の行動について教えてくれる。
本稿では、IoTの例としてスマートフォンに焦点を当て、現在、生活者の何が可視化されているのか、またそのデータが企業のマーケティングにおいてどのように活用できるかを紹介する。
IoTをスマートフォンの文脈で語るとしたら、従来のWebデータ(画面の中のデータ)に対するリアルデータ(画面の外)という構図が最もわかりやすいだろう。本稿では、リアルデータを「現実世界において実際に登録ないしは計測されているデータ」と定義づける。日常的な行動パターンや特定の場所の訪問履歴など、生活者の行動実態を捉えたデータのことである。
リアルデータは、「ファストフード好き」など、まったく新しい軸でのペルソナ作成を可能にする。同時に、特定の店舗への来店も計測できるため、今後はO2Oの領域でマーケティングにもたらす変革が期待されている。その理由については、もはや"Online to Offline"という数年前に話題になった一方通行の送客フレームとは異なり、今は店舗誘導の精緻な効果測定に加えて、Webとリアルの世界をまたいだターゲットの行動分析と、統合的なコミュニケーションが可能となっているからだ。
シナラシステムズジャパン(以下、シナラ)のサービスを例に、リアルデータの活用方法について紐解いていきたい。
活用方法(1)
カスタマージャーニーの可視化
最終的なマーケティングゴールが自社店舗での商品ないしはサービス購入である場合、Webでのさまざまな取り組みから来店までのカスタマージャーニーを可視化できている企業はほんのわずかであろう。リアルデータを活用すれば、広告接触から来店までのすべてのタッチポイントを紐づけることができ(図表1)、自社の取り組みについて、次の問いに答えられるようになる。
●生活者の動線としてよく言われるのが、広告接触→クリック→サイト訪問→詳細ページ閲覧→Webコンバージョン→来店といったフローだが、この教科書的な順序は、本当に自社の場合に当てはまるのか?
(いくつかの取り組みで見えてきたのは、実は必ずしもそうではないということであり、場合によってはWebコンバージョンと来店には良好な相関関係が見えたものの、実は来店後にコンバージョンしているというケースも少なくない。したがって、それぞれの施策のゴールを来店とする場合、Web上の中間指標を設定するにあたってカスタマージャーニーの可視化は極めて重要)
●現状、自社サイトで紹介しているコンテンツや、配信している広告のうち、どれが最も来店に寄与しているのか?(より深堀りをして、閲覧コンテンツの組み合わせや回数、さらにはWebコンバージョン率ではなく来店率で見たとき広告の最適フリークエンシーを検証することもできるし、そもそも広告がボリュームおよび獲得単価ベースで、どれくらい来店に寄与しているのかも検証できる)
●あらゆる施策およびWeb媒体の評価基準となっているWebコンバージョンは、そもそも来店に必要不可欠なステップなのか?(現在ほとんどの企業はこの中間指標をベースにWeb広告投資金額の最適化を図っているが …