「コピーライターの登竜門」として、半世紀にわたって若手クリエイティブ人材の発掘・育成を目指してきた「宣伝会議賞」。第54回を迎えた今年は、アワードを象徴する存在である公式ロゴマークを策定し、さらにそのロゴマークをベースに賞状・トロフィーもデザインを一新した。

完成した、正八面体のトロフィー。頂点から見ると、ロゴマークが浮かび上がる。
グランプリ、コピーゴールド、CMゴールド、そして眞木準賞を受賞した4人に授与される新たなトロフィーをデザインしたのは、ロゴマークと同じく、アーティストの野老朝雄氏。東京2020大会エンブレム作者による、これまでにない"まったく新しい形のトロフィー"が完成した。
野老氏のイメージがそのまま形に
「オール3Dプリンターでつくりましょう」―野老氏からそんな提案が出たのは、トロフィー制作プロジェクトの初期段階だった。宣伝会議賞を象徴する存在となる、新しいトロフィー。その制作パートナーをどう選択するかは大きな課題だった。
当初は、野老氏がかねてから懇意にしている地方の鋳金工房に依頼する方向で進めていたが、「地域のものづくりの現場ももちろん魅力的だが、最新技術を使ったものづくりも面白そう。物理的に近い距離でパートナーと連携しながら、新しいトロフィーを形にしてみたい」との言葉から、オール3Dプリンターでのトロフィー制作がスタートした。
世界最先端のテクノロジーソリューションを取り扱う丸紅情報システムズの協力の下、複数回にわたる打ち合わせと試作を経て、完成に至ったトロフィー。野老氏による2Dスケッチを3Dデータ化し、それを3Dプリンターを用いて造形するというプロセスで進行した。
初回の打ち合わせでは、野老氏から制作チームに対し、完成イメージやデザインの意図を共有。従来の宣伝会議賞のトロフィーの「持ちにくさ」という課題を解決し、トロフィーの新しい持ち方をデザインしたいという意図や、ロゴデザインをベースに精度の高い造形を目指したいという方針を確認した。
これと合わせて、世界最新の3Dプリンター&スキャナー10台以上が稼働するスタジオを見学。機械や素材に触れながら、どこまでの表現が可能なのかを確かめた。トロフィーを造形したのは、マルチマテリアルフルカラー3Dプリンター「Stratasys J750」(米ストラタシス社が開発)。最大6種類の造形材料を混合するマルチマテリアル機能を搭載するほか、5色のカラー材料を組み合わせたフルカラープリントに対応しており、さらに最小積層厚0.014mmとストラタシス社製品の中で最も積層厚が細かく、なめらかな高精細造形が可能だ。
従来の3Dプリンターにはない素材の質感・色彩・細部のクオリティを実現することができる最新機器。既存の3Dプリンターによる ...