「心のつながり」「ロイヤリティ」といった定性的な価値向上を目指すことに、なかなか着手できていない企業も未だ少なくありません。その中で、新規顧客の開拓のみならず、ファン化、ロイヤリティアップ、エンゲージメント強化など、既存のお客さまとの関係性強化に力を入れ始めたマーケターに、取り組みの今を聞きました。



お客さまを招いた、MEETイベントを開催。ブランドの歴史や、商品のお試しなどを通して、お客さまと社員が交流を図る。
既存顧客と向き合い共創できる関係目指す
ポーラが展開する、個肌対応スキンケアブランド「APEX」は昨年からマスメディアを使って広くリーチを獲得する施策から、既存のお客さまと向き合い、ファンとしてブランドを共に創造してもらえるような関係づくりに舵を切っている。ブランド誕生から28年となる「APEX」の方針転換は、ポーラの全社方針を受けてのこと。この戦略の背景には、成熟市場におけるプレステージ商品の課題がある。
高価格帯のプレステージ化粧品を、委託契約販売員ビューティー・ディレクター(BD)や、ポーラショップなどのビジネスパートナーを通して販売するビジネスモデルで、エンドユーザーとの接点が少なかったポーラ。「ビジネスの構造上、BDの数がそのまま事業規模につながるため、その数を増やすことに注力していた時期もあった」と、APEXブランドマネージャーの菅千帆子氏は話す。
同社のビジネスモデルでは、お客さまとの距離が最も近いBDの接客の質が、お客さまとの関係性に大きく影響する。本来BDの育成には時間がかかるが、「数を増やすことに重点を置いた結果、教育が追いつかず、現場が疲弊するという社内の問題意識があった」(菅氏)。
日本市場は人口の減少に向かう中、国内外から参入する競合ブランドは増えていくという厳しい市場環境のなかで …