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小売り・メーカーの販売戦略に生かす! Amazon研究

そのお客さまの要求は「過剰」か「まっとう」か?サービス業が対応すべき限界を心理学の観点から考える

榎本 博明(心理学博士)

物流、配送など規模のメリットを生かしたスピードと価格で日本の消費者はアマゾン基準で便利さに飼いならされてしまっているとも言える環境。アマゾン基点の便利さが浸透している中で、国内企業はそれにどう向き合うべきか。

「顧客満足度」が日本人の心を壊す

日本のサービス業の顧客対応は非常に質が高い。だが、今やそれもいきすぎて、労働者を極限まで追い詰めつつある。ここで考えなければならないのは、欧米人と日本人の心の構造の違いである。

アメリカなどに行くと店員の素っ気ない態度に物足りなさを感じたりするという人が多い。たとえ笑顔で親しみやすい雰囲気がある場合も、お客に奉仕するといった雰囲気はない。たとえば、購入した商品に不具合があって交換してもらいに行っても、申し訳なさそうな感じはなく、ごくあっさりとしたものだ。商品の不具合は販売員である自分の責任ではないのだから、個として生きる文化であれば当然のことと言える。

これが日本だったら、商品の不具合は技術者の問題であって、販売員である自分の責任ではないにしても、非常に申し訳なさそうに謝り、丁重な態度で交換するはずだ。そんな日本が、顧客満足(CS)などというアメリカで生まれた考え方を取り入れるようになった。だが、そのような概念は、日本がわざわざ導入するようなものではなかったはずだ。

ところが、欧米コンプレックスが強い日本人は「海外では…」と言われるとすぐに、「そうか、日本は遅れているな」「だから日本はダメなんだ。海外に学ばなくては」と思ってしまう。文化の違いを考慮せずに、何でもすぐに欧米流を取り入れるのが良いことだ、それが最先端なのだと思ってしまう。そして、文化的適合性など考えることなく海外流を取り入れ、それで最先端に追随しているような得意な気持ちになる。

こうして顧客満足度が取り沙汰されるようになった。もともと、客に丁寧な応対をし、客との関係を大事にしてきた日本の客商売の場に、顧客満足度などといった指標が取り入れられるようになって、従業員は過剰な「お客さま扱い」を強いられるようになったのである。それにより、客だけでなく従業員も大切にしてきた日本の組織が、従業員を追い込む組織になってしまった。

「間柄の文化」と「自己中心の文化」の感受性の違い

私は、欧米の文化を「自己中心の文化」、日本の文化を「間柄の文化」と名づけて対比させている(『「みっともない」と日本人』日経プレミアシリーズ)。

「自己中心の文化」というのは、自分が思うことを思う存分主張すれば良い、ある事柄を持ち出すか持ち出さないかは自分の意見を基準に判断すれば良い、とする文化のことである。常に自分自身の気持ちや意見に従って判断することになる。欧米の文化は、まさに「自己中心の文化」と言ってよい。そのような文化のもとで自己形成してきた欧米人の自己は、個として独立しており、他者から切り離されている。

一方で、「間柄の文化」というのは、一方的な自己主張で人を困らせたり嫌な思いにさせたりしてはいけない、ある事柄を持ち出すか持ち出さないかは相手の気持ちや立場を配慮して判断すべき、とする文化のことである。常に相手の気持ちや立場を配慮しながら判断することになる。日本の文化は、まさに「間柄の文化」と言える。そのような文化の下で自己形成してきた日本人の自己は、個として閉じておらず、他者に対して開かれている。

このような日本的な自己のあり方に対して ...

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