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小売り・メーカーの販売戦略に生かす! Amazon研究

Amazonが変えた競争のルール、物流・配送品質に与える影響に国内企業はどう向き合うか?

角井 亮一(イー・ロジット)

物流、配送など規模のメリットを生かしたスピードと価格で日本の消費者はアマゾン基準の便利さに飼いならされてしまっているとも言える環境。アマゾン基点の便利さが浸透している中で、国内企業はそれにどう向き合うべきか。

23区で「Prime Now」開始 アマゾン品質がEC業界の標準に

角井亮一撮影

昨年(2016年)の12月はアマゾンらしいニュースが続けてメディアを賑わした。

まず、ボタンを押すだけで日用品ブランドの注文ができる「Amazon Dash Button」(アマゾンダッシュボタン)」が日本発売となった。日用雑貨の有名ブランドごとにボタンが用意されていて、1ボタン500円(税込)。ただ初回の商品注文時に商品代金から500円が差し引かれるので、実質0円で購入できる。年会費3900円のAmazonプライム会員向けのサービスだが、現在40以上のブランドが販売されている。

消費者にとっては普段使いの日用品の買い忘れがなくなり、ワンプッシュで家に商品が届く便利品だし、アマゾンからすれば「目の前に商品を置いたままにしておく」ツールだ。

また、1時間以内配送で知られる「Prime Now」(プライムナウ)が、昨年12月から東京23区のすべてで利用できるようになった。2015年11月に世田谷区など都内8区から始まったサービスだが、約1年で東京23区全域へと広がり、取り扱い商品も当初の3.5倍以上となる最大6万5000点まで拡大した。

国内で13番目の新物流拠点となった「アマゾン川崎FC(フルフィルメントセンター)」では国内初、ロボット在庫管理システム「Amazon Robotics(アマゾン ロボティクス)」を導入。その内容が公開されたのも12月のことだった。

アマゾンが書籍のEC(インターネット通販)として日本に上陸してきたのは2000年11月のことだ。当時、日本のEC市場はヤフー、楽天が一大勢力として市場全体をリードしていた。しかし宅配便の取り扱い量が25億個(2000年度)から37億個(2015年度)に急増するこの10数年の間に、その様相は一変した。現在ではアマゾン抜きに日本のECは語れず、同社の物流サービスが業界標準と考えられるようになった。

具体的に言えば、送料無料、圧倒的な品揃え、スピード配送だ。アマゾンの送料無料は、当初キャンペーンとしてスタートしたが、2010年11月に通常サービスとなった。アマゾンが販売する商品は総じて他のECサイトで販売される同じ商品よりも安く、そのうえ送料まで無料とあって、多くのEC事業者はその対応に苦慮している。

アマゾンでは「地球上で最もお客さまを大切にすること」、「地球上で最も豊富な品揃え」をビジョンとして掲げている。だからある意味、「売れるかどうか」、「採算が取れるか」に関係なく、品揃えは日々追加され、現在のところ、数億アイテムを数える。日本のECでそこまでのレベルで対応できているところはない。

翌日配達の宅配便が一般的な日本では、注文翌日に商品が手元に届くのは何も珍しくはない。もちろんアマゾンの配送スピードはそれ以上だ。当日配送(「当日お急ぎ便」)が一部地域(関東、関西)でスタートしたのが09年。以後、大型物流センターが稼働するたびに、当日配送の提供エリアを広げ、いまでは国内約8割のエリアで当日配送が可能になった。

楽天とアマゾン プラットフォームの違い

図表1 アマゾンと楽天市場の配送体制

これまでECのプラットフォームといえば …

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