「人工知能」への注目が高まっていることは知っていても、それが自身の現場業務にどのように関わってくるのか、認識している人はそう多くないのではないでしょうか。人工知能を業務で活用するようになると、何が可能になるのか。また、そこでマーケターはどう振る舞うべきなのか。人工知能研究の権威に『近未来予想図』を聞きました。
- 「セグメンテーション」「最適化」「効果測定」「レコメンド」という大きく4つのアクションにおいて人工知能を活用し、従来よりスピーディーかつ高精度な施策を展開することができる。
- 十分な情報さえあれば、従来のマスマーケティングの基本であった「モデリング」は必要なくなる。個々人の行動履歴に着目するモデルレスのほうが、精度の高い施策を展開できることがすでにわかっている。
- マーケターは、アクションをどのように最適化するかを自分で作業して決めるのではなく、それを自動でリアルタイムに代行する仕組みをつくる側にならなければならない。
マーケター×人工知能で実務の現場はこう変わる
まずは理解したい「人工知能とは何か」
人工知能の発展は3つの世代に分けることができる。第1世代では、多様な目的を達成するため、可能性を「探索」する方法を研究していた。第2世代では、知識や推論を、論理を使って駆動し、定理証明のような「問題解決」に使おうとした。第3世代が現在で、インターネットの登場で大量に発生する「データ」を使い、統計的に知識処理を模倣する。
現在の人工知能ブームの元となっている統計的機械学習はこの第3世代に入る。例に質問応答システムがあり、第2世代では構造化し保存してあった知識を利用し答えを生成していたが、第3世代ではネット上に氾濫する情報から質問に最も近い表現を見つけ、対応する答えを返すようになった。
もう一つの例が機械学習による分類システムである。身近な例がスパムフィルターで、スパムメールとそうでないメールを多くの例を使いフィルターに教え込むと、以後新しく届いたメールがスパムであった場合、フィルターアウトしてくれるようになる。
本稿では、現在最も注目を浴びている第3世代に集中して解説をするが、上記第1から第3世代までの人工知能はいずれも重要であり、実際に使う際はそれぞれの特徴を理解した上で総合的に考えるほうが良い。
第3世代の人工知能で一つ注意すべき点がある。基盤が統計であるため ...