人的営業を重視する傾向にあった日本のBtoB企業。しかしデジタルの浸透で法人顧客の購買プロセスも変化し、デジタルの活用、マーケティング部門の強化が重要になってきています。長くBtoBのマーケティングに携わってきたプロフェッショナルの対話から、BtoBマーケター自身の社内における“マーケティング”のあり方を考えていきます。
デジタルの浸透で変わる、法人営業の現場
―お二人のご経歴を教えてください。
東海林:日本電気(以下、NEC)に入社した当時は、販売代理店向けの営業を担当していました。その後、「BIGLOBE」の法人向けサービスの企画開発や営業を経て、CRM本部に異動。現在は特にデジタルを使ったBtoBマーケティングを担当しています。
中東:僕は2016年8月からKDDIで、BtoBマーケティングの組織を率いています。それまでは外資のIT企業複数社で、BtoBマーケティングを担当していました。
―日本企業のBtoB事業では、マーケティング組織の役割自体がまだ明確になっていないという声を聞きます。お二人は部門の役割をどう定義していますか。
東海林:私の部門の役割は端的に言えば、営業に対する新しい案件の創出にあると考えています。法人営業の現場もデジタルの浸透で大きく変わり、これまでの人に依拠する営業スタイルだけでは、お客さまとの関係性を構築するのが難しい環境にあります。
「BIGLOBE」で法人営業を担当していた2000年頃は、まだプロダクト寄りのマーケティング・営業活動が機能していました。しかし現在のICT市場はお客さまの課題に合わせたソリューション提案が主流であり、マーケティングや営業、コミュニケーションの方法を見直さなければならない状況にあります。NECにどんなことができるのか、そのポテンシャルを知っていただかないことには、何かあった時に相談をしてもらえませんし、その理解を促す活動においてマーケティングが営業に貢献すべきと考えています。
中東:僕が入社する前、KDDIも同様の課題感を持っていました。BtoC向けの「au」ブランドは高い認知と好感度を獲得していますが、BtoBの事業領域の可能性は、まだ十分には知られていない。マーケティング組織を立て直す必要があるとの考えもあって、僕が入社することになりました。
入社後、まずは社内におけるマーケティング部門の役割を定義するところからスタート。マーケティングは売上に貢献することに役割がある、では売上に貢献するためには何をしたらいいのか?購買プロセスを定義して、その中でマーケティング部と営業部が担うべき部分を明確化、さらにマーケティング部の中でも各チーム別に役割を定義していき、個々人の仕事までブレイクダウンさせて考えていきました。
これまでも社内には営業支援や販促など、マーケティングの機能はありましたが、分散化していたのと、営業から見て広告会社への発注窓口のような状況になっていました。今は、営業のベネフィットにつながる形でマーケティング部という組織をデザインし直しているところです。
東海林:以前は認知拡大を強くするという役割だけでも、十分機能していたんですよね。ところがデジタルが出てきて、状況が大きく変わったと思います。
マーケター自身が自分をマーケティングする
―営業部門を始め、社内の他部門からの理解を得られなくて困っているという声を聞くことがあります。
中東:BtoBの場合には、マーケティング部門自体が、社内における自分たちのマーケティングに取り組むべきだと思います。一体、どんなバリューを持っているのか、それをきちんと定義して、コミュニケーション対象者に理解を促していく。敵対する社内の他部門と思うのではなく、マーケティング活動の対象者であると考えれば、連携を深めるための戦略も見えてきます。
僕はマーケティングがデジタルを使ってどんな取り組みをしているのか、細かいところまで理解してもらわなくて良いと考えています。それぞれ、プロフェッショナリズムを発揮する領域は違うわけですから。ただ、僕たちは営業部門が担う後工程の生産性を上げるために活動しているということをきちんと理解してもらう。例えば ...