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日本企業のマーケティング組織はどうあるべきか?

加治慶光(アクセンチュア チーフ・マーケティング・イノベ―ター)

専門スキルが必要とされるマーケティング職。しかしながら日本企業は人事異動が多く、グローバル企業と伍せるようなプロフェッショナル人材が育成しにくいという課題の声も聞こえてきます。日本企業ならではの特性を踏まえ、マーケティング組織をグローバル企業と戦えるレベルまで高めていくために必要なこととは。経営・組織の観点で解説します。

    日本企業のマーケティング組織のあるべき姿

  • 新卒一括採用と終身雇用がセットとして前提になっている典型的な『日本企業』的組織は、グローバル組織に学び、プロフェッショナル型の採用・人事育成を取り入れざるを得ない。
  • 具体的には、(1)CxOを軸とした組織設計、(2)キャリア・プランの整備、(3)ジョブ・ディスクリプションの活用、(4)クロス・ファンクショナルな活動機会、(5)社内公募制度、といった制度を取り入れることが考えられる。
  • タイムレスなマーケティングフレームワークを使いこなすとともに、タイムリーなデジタルテクノロジーへのまなざしを兼ね備えた人材が、これからのマーケティングを主導していく。

ジョブ・ディスクリプションの文化がない日本企業

私が大学卒業後に最初に就職したのはバブル真っ盛りの都市銀行だったが、ここは典型的な『日本企業』的組織だった(第1カテゴリーとする)。その後、コカ・コーラやタイム・ワーナー、アクセンチュア等のいわゆる『日本企業ではないグローバル組織』(第2カテゴリー)に参画し、さらにソニー・ピクチャーズや日産自動車のような『日本企業じゃないかと思われるがグローバル企業を標榜する組織』(第3カテゴリー)でも働く機会を得た。その3つのカテゴリーの組織に属した経験から、第1カテゴリー企業の特殊性がどうして発生したかを簡単に考察したいと思う。

大雑把な結論を言うと、『主たる業務やビジネスのメインが日本国内にあったから』だ。第2カテゴリーに属するようなグローバルな企業活動を前提とする組織は、多かれ少なかれ海外の労働市場で人材を調達する必要があり、その前提を考慮して組織設計が行われている。ほとんどの労働市場において、人材獲得の起点となるのは「ジョブ・ディスクリプション(JD)」と呼ばれるポジションの内容が定義された書類。対象になる候補者の経験や能力、職務の内容や、組織から期待される活動内容等を事細かに書いたもので、この書類に従って採用プロセスが運営される。この書類をつくるプロセスを通して自然に仕事内容が明確になり、専門性が問われるプロフェッショナル型のリクルーティング活動が行われる。

一方で、新卒一括採用と終身雇用がセットとして前提になっている日本国内の採用状況においてはそもそも「JD」自体の重要性は歴史的に低かった。長期間にわたって人材が1社に帰属する前提で組織設計されている第1カテゴリー企業においては、人材に対して丁寧に多様な経験を積み重ねて経営者としての成長を促進していく人事ローテーションが重要視されてきたわけだ。

第2カテゴリーの企業は長きにわたってグローバルに活動しているから、当然JD中心、専門性を核に据えた採用活動を行う。そこに我が国の高度成長期を支えるべく海外に打って出た第3カテゴリーに属する企業群が第2カテゴリー型の採用・人事戦略を学び、日本企業の特徴を織り交ぜながら成長を遂げた。一方で、日本国内での活動に重きを置いたままであった第1カテゴリー企業の組織が結果として世界的に特殊に見えてきたのではないかと思われる。この傾向はマーケティング部門だけではなく全社的なものであることに疑問の余地がない。

「第1カテゴリーの企業はその特殊性を維持すべきか」という問いについては、引き続き、終身雇用を維持し、新卒採用を重視し、主たる活動が日本国内中心である組織を例外として、大多数の企業は第3カテゴリー企業に倣って第2カテゴリー企業から学び、プロフェッショナル型の採用・人事育成を取り入れざるを得ないだろう。皆さまご存じのように国内市場が急激に縮小し、海外に成長の機会を求めざるを得ないからだ。第3カテゴリーを目指してグローバルでプロフェッショナルな組織形態に急速に変化している企業としては、サントリー、資生堂、ファーストリテイリング、楽天などがBtoC領域の代表例だと思う。いずれもグローバルな視点を持った決断力と先見性に優れるリーダーが果敢に世界に挑戦する途上で大きな変化を先導されており、成果も出始めていると言える。

経営・組織の観点から第1→第3カテゴリーへ変化するために

第1カテゴリー企業が第2カテゴリー企業から学び、第3カテゴリーへの変革を実現するために、具体的に制度等で参考になりそうな例を挙げてみたい。そもそも第1カテゴリーから第3カテゴリーへの変革は企業の本質的グローバル化を意味し大変な困難を伴うものだが、本稿においては第2カテゴリー企業が導入している典型的な制度、組織の例をいくつか提示したいと思う。

制度は、(1)CxOを軸とした組織設計、(2)キャリア・プランの整備、(3)ジョブ・ディスクリプションの活用、(4)クロス・ファンクショナルな活動機会、(5)社内公募制度、の5つだ。

(1)CxOを軸とした組織設計

CEO、COO、CMO、CFO、CIO …

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