消費者との接点がデジタル領域へと広がる中、企業のマーケティング・コミュニケーションもデジタルメディアやツールの活用が中心になりつつある。しかし、デジタルとアナログを融合させたアプローチはより顧客とのエンゲージメントを強化し、コミュニケーションの効果・効率を高めることにつながる―日本郵便が主導するプロジェクトを追った。
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(左から)
マルケト ビジネス開発 白井義孝氏
Sansan マーケティング部 エバンジェリスト 石野真吾氏
日本郵便 郵便・物流商品 サービス企画部 担当部長 鈴木睦夫氏
博報堂プロダクツ ダイレクト マーケティング事業本部 大木真吾氏
デジタルだけに捉われず顧客に合ったアプローチを実行
日本郵便の鈴木睦夫氏は、マーケティングオートメーション(MA)を活用し、Eメールなどのデジタルチャネルとダイレクトメール(DM)を組み合わせた効果を検証する「フルチャネルコミュニケーションプロジェクト」を推進している。この背景には、鈴木氏が長年マーケティングに携わる中で感じてきた危機感がある。顧客と企業の関係性やカスタマージャーニーを踏まえチャネルニュートラルに戦略を考える、真の「マーケティング」を理解・実行できるマーケターの不在に鈴木氏は警鐘を鳴らす。「デジタルソリューションを追いかけることに必死になり、コミュニケーションがデジタル領域に閉じていると感じます。もちろんデジタルの優れた面を否定するのではなく、組み合わせることが大切です」。
初回には、広告主企業としてSansan、MAプラットフォーマーとしてマルケトが参加。「デジタル/アナログの二項対立でなく、双方を組み合わせることで相乗効果が得られると考えます。特にDMは手元に実物が届き、企業・ブランドの温度を感じられるツール。コスト効率重視のメールだけでアプローチするよりリッチなコミュニケーションを実現できる」と鈴木氏。
博報堂プロダクツの大木真吾氏は「デジタル化の流れが加速する時代だからこそ、マーケターは目先の新しいテクノロジーに注目しつつも、生活者の価値観やニーズに寄り添う意識が何より必要。そしてデジタル/アナログ問わず顧客に合った最適な手段を選択し、コミュニケーションを実行するべきです」と話す。マルケトの白井義孝氏は、「あらゆるチャネル、デバイスで蓄積された個客データをもとに一貫した顧客体験を提供することが、成果につながると考えています。それを実現するのが『エンゲージメントマーケティングプラットフォーム』です」とMAが目指すべき立ち位置に言及した。
Sansanの石野真吾氏は、Eメールを中心としたマーケティング施策に課題感を持っていたところ、鈴木氏と出会った。「実証実験の結果、当初の見込みを大幅に上回る受注貢献があった。DMとメールの組み合わせはメールのみより1.8倍のクリック率、1.5倍の資料アクセス数になりました。また、送付対象者と同企業内の別の方からレスポンスが来るケースも。開封して一瞬で閉じられるメールに対し、手元に残るDMならではの長期間にわたる効果もあると、確かな手応えを感じました」と石野氏。とはいえ、もし石野氏が受動的な姿勢で臨んでいたら、プロジェクトの成功はなかったと参加メンバーは口を揃える。「MAや広告、DMはあくまでツール。ターゲットを明らかにし、効果的なアプローチを考え、施策の効果を確かめる。ツールが効果を最大限に発揮するには、マーケティングの各プロセスにマーケターが主体的に取り組む必要があります」と鈴木氏はマーケターに求められる姿勢を改めて強調した。本プロジェクトは現在もさまざまな企業と実証実験を行っている。今後もその成果に注目したい。
お問い合わせ
日本郵便株式会社 フルチャネルコミュニケーションプロジェクト
〒100-8798 東京都千代田区霞が関1-3-2
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